確かに非木造建築の王道はRC造なんですが、欧米におけるRC造の本旨は「設計や造形の自由度」だったりします。端的に言えば欧米アーキテクトから見れば「四角四面に造るのであればRC造である必要性が無い(∴建築家はなんじゃこりゃなアートな建築を設計するのが好きである)」という側面があるのです。
高層化についても「限りなく鉄骨造みたいなRC造でいんじゃね」な部分ありますし(耐震性は日本固有の事情ですし)、RCで造るなら「所謂デザイナーズであるべきだ」なのも真実なのであります。
しかし、前述のとおりで耐震性や耐火性という点からその強度を勝って日本で伸びてきた非木造建築ははなから使途目的が若干ずれておるんですね。日本人の木造文化的にも「フレーム構造の四角四面」って嫌いじゃない部分も多々ありますし、木造建築に2×4パネル工法がすんなり導入されていく背景にも(作りやすさもあるでしょうけど)フレーム構造よりド・四角四面にならざるを得ないモノコック構造への親和性もあるのじゃなかろうかなどと思ったりもします。
非木造戸建に関しては固定資産税な要素も込みで(正直賃貸住宅規模の場合にはあまりお勧めに思えないのですが)『高級軽量鉄骨戸建』という世界も一般的となっております。コストの点からもアレだとは言え「戸建を意地でもRC造で」なニーズって耳にすることとても少ないと思いませんか?
話をRC造の特徴と日本の生活習慣に戻して考えるとおのずと結論も見えてくるのであります。
ぶっちゃけRC造は「B・T別は非常識」なんですよ。
理由は簡単で、外見の自由度に反して内部もいたるところがコンクリやセメント塊となっているため、配管(PS)の自由度に限界があり、昭和にはRC造マンションも居室は和室が一般的だったので「室内オール床デッキ構造(根太工法など)」などもありましたが、機密性能が特徴ひとつであるRC造は呼吸しない壁なので四季の温度変化が激しく結露でデッキ工法で造作された床は痛みやすいんです。
(現在は水周り関係室や設備の下だけにデッキ上げを限定し、居室は所謂構造地に直接コンパネを貼るスラブ直張り工法が一般的となっている。)
更に、梅雨のある日本には外断熱工法がほぼ絶望であり(多分ここがセントラル方式導入のコスト割れしやすさと関係していると思います)、日本人の生活習慣に「各世帯に洗濯機+洗濯物の外干し」がありますが、ここまで読んでいただければご理解いただけるかと思いますがRC造の場合「(設計の効率的にも)そういう使い方を予定していない」のです。
そこに四角四面も好きであるとなればですね、、
RC造は「事業建築だけでもいいのでわ」と思ったりするのであります。
(※勿論西洋式文化を愛好する意味でRC造マンションを希望するのはアリアリですので、この場合デザイナーズ志向も由とするのが筋論として正しいですし、B・Tは同一レストルーム形式でも可でありB・T別に拘らず、外干し希望はそれほど強くないので独立洗面とは別にランドリールームがあるとベターみたいな「西洋建築志向」にそった希望にするのが吉になります。)
前述のB・T別志向にしても、心理学社会学的生活習慣の背景があるのでございまして(欧米の場合夫婦の寝室には専用のバスルームがって作りだったり)、海外から日本に旅行した欧米人の間でも「日本のB・T別なお風呂文化が好評」だったりしますから(何も無理やりレストルーム文化にシフトする必要も無いので)、日本には正統派RC造マンション志向が必ずしも合っていないと思うんです。
※個人的意見ですが、ホテル建築をお手本とするRC造建築と昭和の東京オリンピック時代に日本の発明として登場した3点ユニットは別の意味で伝統ですから「1RタイプRC造シングル+3点ユニット」という世界は日本的王道のひとつだと思います。
商店街などの事業物件建築に多く見られる低層鉄骨造建築にクオリティー的疑問を感じられる方もいらっしゃるかもですが、経験的感触で恐縮ですが「ワンフロア1住戸タイプの鉄骨造はかなり強固である」傾向があり、過去retour取材レポートでも「遮音性などの点からもRC造より強い鉄骨造」が存在したのも事実です。
住宅メーカーがファミリータイプの戸建に『高級軽量鉄骨』を志向したところにも同様の意図あるのかもです。
本来木造がベストなのだから木造ベースでいくべきではないかってご意見もあると思うのですが(個人的にもそう思います)、コストや工務店さん的にも低層から中高層賃貸住宅を考えれば木造一択は物理的に難しい(総務省調べでも昨今日本の新築物件の6割以上は非木造)。
木造も木造大国米国の2×4工法におされている昨今、
「日本的鉄骨造」って建築が期待されているのではなかろうかと思うのです。
(ユーザーにとっては性能が同じならRC造でも鉄骨造でもかまやしないのですから。)
何か日本的鉄骨造のコンセプトがあるのかって聞かれると、これというアイデアありませんが(笑
製鉄技術も日本のお家芸じゃないですか(勿論予算に余裕あればカーボンも)。
特殊建材の開発と(勿論呼吸する非木造壁面パネルも得意でしょうし)「四角四面且つ水周りの自由度に拘るすっごくスクエアなアーキテクトでは無く設計士がコンセプトな建築」とかどうですか?
(実際ゼネコンや工務店が本気出せばRC造超える鉄骨造自体特に難しくはないでしょう。)
アバンギャルドに挑戦する工務店さんの登場を期待しています。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
コメント欄は承認制です
(評論記事等はコメント欄を閉鎖する場合があります。また、一定期間を経過した記事のコメント欄は利用できません。)
詳細はサイドバーコメントリンク説明参照
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
日本の非木造建築には鉄骨造のが合っているのではないか?
2016年01月11日
この記事へのコメント
この記事へのトラックバック