賃貸住居の契約書で「解約について」の定番といえば“一ヶ月前の解約予告”になる。
これの根拠は、退出管理の業者の手配や、新規空室募集の準備期間が必要になるからなんだけれども(空室予定で募集開始する業者もいるにはいるんだけれども、申し込みの要件が「内見」になるケースがほとんどなので、退出後の空室募集:実質即入居が一般的)、同時に「退出するにしても一ヶ月の間に次の転居先が見つからない事は有り得ない」からでもある。
通常申し込みから契約までなんやかんやで一週間ぐらいかかるので、空室の選考期間は余裕で2週間在る(残りの一週間とちょっとは引越し準備含めてのオーバーラップ)。これでちょうど『契約日=日割り賃料発生日』でなんの事無く引越し先も余裕で見つける事ができる。
時折解約予告が2ヶ月前だったり、店舗なんかの事業物件になると3ヶ月や6ヶ月ってものもあるけれども、これは専ら(店舗なら営業中のお店を内見可能だし)内見無しでも申込みが可能な賃貸管理をしていたり、管理会社の会社規模が大きくて経理的にも早期に退出管理の準備をしなければならないなど「次の新規空室募集」のための事情から設定されている。
基本的に「一ヶ月の間に次の転居先が見つからない事は有り得ない」って認識は同じ
ところが昨今の部屋探しは『解約届無し』のケースがとても目立つ、
当然解約届無しなのだから、新しい部屋の契約まで二重家賃の心配をしなくちゃいけない。業界的にもこの『解約届無し』事例の増加への対応を図っているので、紳士協定で「2週間ぐらいは家主さんに承諾してもらう方向で交渉」がなんとなく定着してきた。
これ簡単に言うと「2週間家賃をタダにしてくれ」って話、
流れ的には申し込みの2週後に家賃発生になるので、申込み後の「審査通過(=実質的に契約確定、契約日の設定が行われる)」の瞬間が解約届を出すタイミングで、この一週後に契約(契約金清算)、契約後の一週間後に「契約期間発生:鍵引渡し」が、今一般化しつつあって、、
そこで、交渉案件として「解約届を出していないので、もう少し日割り家賃発生を遅らせてくれないか」って事が多くなるんだけれども家主さんとしては2週間を超える家賃無料の交渉になるので「実質一ヶ月家賃をタダ(フリーレント)にして欲しい」って話になるから限りなく「礼金交渉(ほとんど無理)」と同じになってしまう。
なもんだから、だいたい(結果は予想できているので)申込み時に「日割り家賃の交渉は二週が限界です。あまり無理な交渉を織り込むと審査そのものに響きますから二週間が最大であると理解してください」を説明するのがルーチンになっている。
(※実際ほとんど日割り交渉不可の場合もあるし、家主さんによっては「交渉」聞いた瞬間審査落ちの場合もあって、交渉は慎重にやらなくちゃいけない。実質日割り交渉の結果は平均すると「10日前後」ってとこじゃないか)
ある意味、その環境で「礼敷条件の話になるのはナンセンス」とも言える(審査落ちの可能性が高まるし、退出時を含むその後の人間関係を考えても得策じゃ無い)。つまるとこベストのタイミングで解約届を出していれば、解約届無しに比べて2週は家賃をセーブできる(実質二重家賃ZERO)、解約届け出している状態での2週の二重家賃の立ち位置からみると、「一ヶ月家賃を浮かせた勘定」、
なもんだから、余計に「日割りと礼敷交渉含みの申込み」は、家主さんから見ると「スケジュール管理がアバウトなだけでなく、そもそもその額の賃料の部屋を借りる事に無理があるのではないか?=賃料滞納の心配もあるし、その滞納も交渉なんて話になるのが怖い」となって解釈される可能性を持つ。
申込みの当事者としては「希望賃料だから申込みしている」のであって、そう受け取られる事は誤解なんだけれども、こういう心理的な行き違いは何時の時点から始まったのだろうか?
昔は特別な事情無しに引越しする事は無かった。特別な事情と言えば「転勤」とか「進学」とか「結婚(同棲)」等自分から企画したものというより「そういう事情になったので」だったりしたもんだから「部屋探しは、今の住居に代わる住居を探す」という認識だった。
つまり、希望条件に見合えばそれでOKなのであり、住居の内容に殊更特別の“希望”は無かったとも言える。
昨今の事情は「都市部特有の晩婚化によるシングルライフの延長」に関わるケースが圧倒的に多いので、その企画意図は「収入増による住み替え」とか「利便性を考えた結果の住み替え」「自分自身の暮らし方の転換」であるケースになるから、今引越ししなければならない必然性が最初から無い場合が多い。
こうなると、人の心理はこれまた営業バリバリの不動産業者のキャッチコピー「抽象的な“いい部屋”」なんて概念に影響されやすい。
根本的に「私にとってのいい部屋」は人の数だけ存在するので、部屋サイドからその普遍性を担保する事等不可能だから、自分の部屋探しのコンセプトが「自分の部屋を特定する条件」になる、つまり実際不動産業者に問い合わせする前に「自分にとっていい部屋の、いいの部分」は決定していなくちゃいけない。
ウチみたいに部屋探しのコンセプトからコンサルする会社は稀だから、通常はこの「問い合わせ」する段階からが実質的な部屋探しなのであって、本来なら「今引越しする理由」は成立している、
ここで、第二の心理的な矛盾がおきる。
一ヶ月以上探しつづけて待つと「いい部屋」が出てくるんじゃないか?
ありそうな発想なんだけれども、実は完全に矛盾している。
新規の空室登録自体は一週間や二週間で大きく変わらないばかりか、内容のいい部屋は当然回転が速いから「二週間以内に申込み募集終了」する。つまり、この内容のいい部屋を捕まえるタイミングは当座二週間以内であって、一ヶ月待っているとこの間にチャンスが二回ある、ところが前回のチャンスと今回のチャンスを比較する事は絶対不可能だ。だって、前回のチャンスは他の人が契約しているんだし、
そうなると、今回にはチャンスに相当するブツが無いのじゃないか?って発想になる。
しかし、これも杞憂。数学的には翌週もう一度調査した時点で概ね「あなたのチャンス」は調査終了している(これが「実際に部屋探しをする期間は二週間で十分」の根拠)。
部屋探しが長期化して、なかなか決まらない人の典型的な事例は「内見以前に、有力な空室資料でもボツにしてしまう例」。
「何がいいのかが抽象的なのに、ボツにするポイントだけはハッキリしている」
これにはどうにも調査している担当者もついていけなくなり、話し自体が流れる(「何かいいのがあったら又資料お送りしますね」の常套句は、「もう探しませんよ」という不動産会社の意思表示である場合がほとんど)事にもなり、部屋を探している本人は漂流していしまい、
漂流しているお客さんに積極的に対応する会社ほど「実際の部屋探しは淡白、申込みの追い込みは強引」な会社が多いので、そんな営業会社にたどりついて部屋探しは終わりになってしまう事にもなる。
この部屋探しの失敗の心理をもう少し詳細に考えてみよう。
<つづく>
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最近多くなった『解約届無し』の部屋探し(1)
2006年06月06日
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