それは東京の賃貸と言えば、ある程度の可処分所得がある年齢層のシングルルームがメインになる。前回の『解約届なし』でも触れたところだけれども、晩婚化によるシングル世代の増加は、将来予想される高齢化時代の団塊シングルライフの前哨戦とも言える。
シングル向け住居が、今住居の基本になってきた。
ここをベースラインに入居者数に応じて部屋が増える勘定だ、
一昔前は、一戸建て住居(=実家モデル)の核家族ヴァージョンとして捕らえられてきた住居イメージ(これがシングル向けだと1DK)は、東京を先端に大幅に様変わりしている。
ついこの前までは、シングルの場合ので「所得も増えたのでちょっと贅沢して2DKを」って話もアリだったが、昨今は1LDKであったりデザイナーズ系のストゥディオのニーズが増えている。
家主さんサイドのリノベの方向性も「一室辺りの占有面積の拡大」であって、マンションなんかだと壁抜きで「2DK⇒1LDK」なんて改装が一般的なトレンドにある。
それはともっかく、この「居室の広さ」ってものは心理的にどういった効果があるのだろうか?
高度成長期の著しく居住環境の悪かった時代には(当時の一番コンパクトなユニットは3帖間だった)、心理的なストレスを考えると「一部屋は最低4帖半であるべき」なんて答申によって文化住宅の間取りが見直されたりした時代がある。
そんなこんなで現在「一番コンパクトな部屋のユニットは4帖半」なんだけれども、困った事に1帖の広さが一律じゃなかった(笑
京間 1.82u 約190cm×95cm 10.92u(東京にはありません)
江戸間 1.54u 約176cm×88cm 9.24u(アパートなんかはだいたいこれ)
団地サイズ1.29u 約160cm×80cm 7.74u(築浅マンションなんかこれ)
なんだかんだと、今のところ東京地区の場合標準を『江戸間』で考えるといいと思う。単純に考えると「約9uで6帖だな」って感じ、
なので物件表示の何帖とかではなく、基本的なu数の表示と間取り図を頭の中でイメージするとなんとなく広さがわかるようになってくる。
オーディオ評論家の話からの引用の引用なので調査の出所は不明なんだけれど、「人が安心する広さは4帖半」って話がある。
文化住宅の「4帖半論」と合わせて、これには一定の根拠があると思う。昔の暮らしって家具収納型(布団は押し入れ、ちゃぶ台は折りたたみ)だったので、正方形のこの空間はそのまんま何も無い状態でその広さを体感できた。
茶道における茶室も同様にコンパクトな空間で全宇宙を表現する、
つまり、家具を置く事が多くなった今日的な暮らしから見ると「基本は6帖」となる。
その中で居住性のいい家具の配置を考えると、「ひとつのユニットを4帖半としていくつの空間を配置するのか」で考えるとベストの広さになる(店舗で言えばいくつ接客ユニットをを配置するのかみたいに)。
って事は、一番簡単なのはやはり2DK縲怩フマルチタイプの部屋なのか。昨今のストゥディオは設計上問題があるのだろうか?
ここで改めて昨今の「体感上の広さへのニーズ」を考えてみよう。
「自分の部屋+水周り」⇒「家具のあるリビング中心の部屋」でしょう、ここは。
当然晩婚化によって登場した「自由なシングル」って新しい階層には「自分らしさ」へのニーズがある事になるので(このニーズが無いと新卒の頃の住居から引っ越す積極的な動機が説明できない)、最初から特定のイメージにまとまる『出来合いの部屋』からの脱出になり、ここから考えると「体感上の広さへのニーズ」=「インテリア」と連想して問題ないだろう。「4帖半の暮らしの空間をいくつイメージできるのか」で1Rにインテリアを配置する事で、ストゥデイオは本領を発揮する。
ひょっとすると、一時流行ったデザイナーズは「実はミスマッチ」で、1Rストゥディオという間取りそのものにニーズがあったのではないかとも思う。何故なら「パッケージとしてのデザイナーズ」には既に『出来合いの部屋』の概念が成立しているからだ。
しかし、このミスマッチの部分が先行しイメージ化されてしまって「淡白なユーザー間で記号化した」のが現状に思う。
つまりデザイナーズに本質的に求められているのは「素性の良さ」であって、あまりに完成度が高いと「概念としては1DKアパートと同じ」になってしまうからだ(1DKアパートは非常によく設計された間取りのひとつだから)。
典型例を挙げると「収納」がポイントになる、
思い切ったスケルトン系デザイナーズには収納が無いものもある。しかし収納が無いことは物件広告的には弱点で、必ずしも受けがいいとは言えない。
なんだけれども、「自由度」的に見るとそっちの方が概念としては正しい事になる。ここのところのギャップをどう考えるのか?
衣類の収納イメージにも様々なアイデアがあっていい。
例えばローアングルにポールを配置して「衣類を見せる」ようにリビングソファー裏に幾何学的に配置するとか、オフィース向けの収納ボックスを壁一面に配置して収納壁にしてしまうとか(奥行きが狭いので部屋が広くなる)、パーティションを利用して擬似的ウォークインを造るのもいい(現在ハンガーポールは非常に安価なのでコストもそうかからない)。
立派なクローゼットがあると、クローゼット扉が部屋のデザインに支配的なイメージを持ってしまったりコスト面で安い部材が使われる事で部屋のグレードまで下がってしまう事もある。そもそもクローゼットがあるとその中は「大変な事になっている(笑」ケースもあるので、果たして機能的なのだろうか?って疑問が残る部分も多い。
部屋に収納が無いと「確かに手間がかかるし、費用もかかる」んだけれども、自分らしさのある部屋ってコンセプトだと、その方がニーズに合っているのは確な筈だ。
ストゥディオ1Rは「賃貸上級者向け⇒一人暮らしが長い⇒東京シングルの典型」であり、確かに昨今のニーズには根拠があると見ていい。
逆から考えると「完成度の高いデザイナーズ」とは、ハードに仕事をしているライフスタイルの人にぴったりで、ホテル系賃貸に通じるものがある。当然ある程度の賃料の高さも必然だし、その賃料に見合った内容のグレードが求められる。このタイプのデザイナーズはフローリングの部材や独立洗面のパーツ、シンク回りのタイルやバスルーム等に高級パーツが使用されるので賃料に比例して意味無く部屋が広くならないようにクオリティーを確保するのがキモになる、当然これが淡白なユーザーの記号化に不一致なのは誰が考えてもわかる事だと思う。
ここで再び注目される間取りに「和室」がある、茶道の話に戻るけれども茶道では四季や自分なりの詩的情緒を部屋に表現するもので、部屋自体に最初っから普遍的なイメージがある事を好まない。実は和室は『表現の余地を残したスケルトンと等価』なのだ、
思い出して欲しいのは「1DK和室のアパート」ここの居室を洋風に仕立ててベッドで暮らしている人も多いだろうけれども、ちっとも違和感が無い。我々はフローリングの洋室でも「思い切り靴脱いじゃっている」のであって、完全な洋風のライフスタイルを求めているのではない(土足OKって部屋も稀にあるけどね)。居室の床に寝転がってしまうって『楽さ』って日本特有のくつろぎであって、日本文化の普遍的な特徴のひとつでもある。
昨今のストゥディオは「その和室6帖以上のニーズ」によっているのだ。
つまり和室は6帖以上の部屋がほとんど無いので、ここが洋室志向のファンダメンタルだと考える事もできる。
そんなこんなで注目は「予算が少ない時には3点ユニット1R狙い」「予算がある時には30uランクのストゥディオ」「古築狙いの1LDK40uランク」「逆転の発想で襖を外したら12帖の2DK和室」になる。
つまり最近非常に多くなっている「25uランクのバストイレ別居室6帖洋室」って微妙に現代的なニーズにミスマッチの部屋で、むしろこの場合「1DK和室アパートで遊ぶ」方が結果は面白かったりする。
※築浅マンションの洋室8帖と、1DK和室アパートの6帖間はほとんど同じ広さ
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『1RストゥディオVS2DK〜』部屋数論争
2006年06月15日
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