バランス釜というのは、浴槽の横にダイレクトに設置される風呂釜の事で、水を浴槽に張って沸かすだけのタイプ・シャワー付き給湯型、シャワー付き給湯型台所への給湯も可能なタイプなんかがある。最も一般的なものが『シャワー付き給湯型』で、現在のバランス釜のほとんどはこのタイプだと考えていい、全てのタイプが「追焚機能付き」なのが特徴。
そもそもユニットバス開発の背景は、高度経済長時のホテル建築から発明されたもので、それまで賃貸住宅の内風呂の風呂釜は「バランス釜がその主力だった」。
狭いスペースにも設置可能で、浴槽と風呂釜との接合が最短距離であり給湯や追焚きの効率は最も高い。弱点と言えば(バランス釜の給湯性能に依存するので一概には言えないが)「シャワーのパワーが無い」とこが有名だけれどもここも。効率の高いシャワー口(ホームセンターに売っています)に換装することで概ね解決する(換装する時には専用レンチも同時に購入する方がいい)。
その後登場するユニットバスが建築のイノベーションによって開発された事からもわかるとおり、何もないころから浴室工事をしたときの工事単価はバランス釜浴槽の方がユニットバスより高額であり(タイル張りの浴室そのもののコストが高い)、どっちが高級って評価はナンセンスなんだけど、バランス釜の浴槽がユニットバスに劣っているのではない。現在も新製品が生産され続けている。
蛇口をひねってすぐお湯が出るユニットバスとの違いは、種火の着火が必要な事で(昔のガスストーブと着火のしかたはほとんど同じで、機能的には昔の台所の瞬間湯沸機と同じ)、一昔前のバランス釜には一発で種火に着火しない事もあったので(バイクのキックスタートみたいに)、使い勝手が悪いとか、釜の裏側が掃除しにくいとかってとこから随分と評判を落とした。
しかし、この評判の悪さの中心は「旧型の水を浴槽に張って沸かすだけのタイプ」で、その理由は必ず浴槽に水を張ってからじゃないとどうにもお風呂に入れないって時間的な問題からで、昨今のシャワー付きタイプの登場でその問題は完全に解決している。
なんだけれども、この『バランス釜』人気が無い(笑
実際バランスからユニットへの換装が進まない背景はもっぱらコスト事情による。
新築でユニットバスを導入するのはたいしたコストではないのだけれども(それほどユニットバスはコストパフォーマンスが高い)、バランス釜浴室をユニットバスへ改装するのは構造上最初っから難しい。外付け一般給湯器を導入してって工事になると「ユニットバスではなく浴室埋め込み型浴槽を導入⇒同時にキッチンへの給湯ライン工事」と、かなり大規模な工事になってしまうので換装は簡単でない。で、実際追焚き可能な機能性もあって「使い慣れれば一般のユニットバスより高性能」な面があるから工事として換装する場合、ユニットバス系の住宅より高級なバスルームへの改装になるって話。
なものだから、ファミリータイプでバランス釜からの改装で物件の価値が大幅に上昇する事が見込めれば改装される事もあるのだけれども、シングル向けの住居でのバランスからユニットや、一般的給湯への改装はなかなか進んでいないのが現状だ。
{左:YmFyYW5uc3VkZSec.gif}つまり、基本的な性能はユニットバス以上なのにバランス釜の部屋は賃料が安い。
物件キャラクター的にも、バランス釜浴室は「いかにもお風呂」ってタイプになるので、和室やレトロマンションとの相性が良くて、特有のメカニカルな外観も見慣れると味があってなかなかいい。
とにかく基本性能としては、水からでも20分もあればお湯まで沸かす事もできるし、一般的な給湯と違ってお湯が出るレスポンスがいいので、慣れた人には高性能なマシンである事に違いは無い。浴槽自体も深い和風タイプになるので、高水圧型になるから薄い底のユニットバスタイプより新陳代謝効果も高いため「お風呂入った感」もバランスタイプの方が高い事になる。
イメージ的にちょっとワイルドな側面があるので、この「実を取る」的在り様が入居者のキャラ自体を想わせる。
「バラ釜オッケー」な人ほど無頼漢度が高く、それこそ外観で内容を決め付けない自由な雰囲気がある人が多い。(中には昔の沸かすだけタイプのバランス釜の使い難さがトラウマになっている人もいるから例外はあるんだけれど)
キックスタートのバイクとか、マニュアルシフトの車とか、そういった一手間かかる趣味性があるものだから、今日では万人向きとはやはり言えないのだけれども「味のある部屋でとてもいいのだけれども、バランス釜がね縲怐E・・」な、残念な局面が多いのも事実で、「残念なんだからオッケェなら得るものも多い」って話。
バランス釜浴室には窓があるし(ユニットバスの設備になっている換気扇は無い場合がほとんど)ペンキ塗りだったりタイル張りだったり、その時代をしのばせる趣もある。
新型のバランス釜も未だ生産中で、まだまだ東京の賃貸からバランス釜の部屋が消える事は無いのだけれども、新築でバランス釜が導入される事は在り得ないから絶滅危惧種であることも事実。
昭和ってイメージを求めるならアリなんですけどねぇ、バランス釜。
そんなこんなで、「あなたの部屋のお風呂ってバランス釜?」って聞いてみるのも一計。「そうそう、そうなの。全然困ってないよ、なかなかいいよバランス釜」って返事が返ってきたらその人は細かい事を気にしない無頼漢である証明です(笑
度胸の据わった勝負強い人だと思いますよっ
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『バランス釜』
2006年06月20日
この記事へのコメント
岩原さん、うちじゃないですか縲怐I!無頼漢な女は私です。三ツ矢サイダーやカルピスが似合う部屋、Pタイルも気に入っています。いい物件、ありがとうございました。
Posted by yoshiko at 2006年06月27日 17:29
こちらこそですーある意味「シングル東京物語」ですよね、あのお部屋。今デザインしたら決してあの設計にはなりません!街が又いいですよね縲恊逅ホって、これからもよろしくです。
Posted by kagewari/iwahara at 2006年06月28日 15:40
わたしはバランス釜きらいじゃないですよー。追い炊きができるというただそれだけのことに半端ない魅力を感じます。バス・トイレ別も重要なんですが、追い炊きできるっていうだけで湯船に入る率が高くなるのです。
Posted by 有馬ゆえ at 2007年04月13日 23:21
いやーまったくです。「お風呂を焚く」って言葉も死語になりつつある今バランス釜だからこその価値もあると思うんですよね、ユニット系の高級バージョンに追焚機能付きなんてのも増えていますがこれも構造上ユニットの場合「次入るひと用」な側面が強いので、今東京で「お風呂を焚く」と言えば、それはバランス釜ですよね。そしてバランス釜の浴室にはレトロなデザインも多いですし、貴重なタイル張りである事もあって、リノベ検討する時にも埋め込み給湯器への換装(特定のタイプで可能)だとスムーズなんですがいきなりユニット化だと失うものも多いんですよね。そして重要なところですが、バランス釜タイプの浴槽は「深い」んですよ。これ湯船につかるタイプの人には水圧の関係もあって入った感も強い。ユニットの基本が洋風シャワーバスである事から考えると、それはバランス釜の良さって見直されてもいいですよね。
Posted by kagewari/iwahara at 2007年04月14日 02:57
うちもバランス釜です追い炊きできるのは便利ですが冬だと水からお湯にするのにぴったり1時間かかりますあと湯船がどうしても狭くなるので屈葬されてる気分です温泉とかジム行ってシャワー浴びると嬉しくなっちゃう
Posted by 熊山准 at 2007年04月15日 17:29
1時間は大変ですねっ。。あまり知られていないんですが、バランス釜ってそのパワーにかなりの個体差があるんです。つまりバランス釜浴槽にも選び方っていうか内容の良し悪しあるんですよ。バイクの排気量じゃないですが、ハイパワー型の方がその性質上も快適なんですよね、バランス釜の特徴のひとつに換装が比較的容易って部分があるので、この釜を家主さんに直談判して「費用折半で高性能のものに交換しませんか」ってケースもあるんですよね、なかには自費で高機能型に換装したりとかの実例もあります。一度管理会社に相談してみる事をお勧めします。話のわかる家主さんなら設備として換装考えてくれるかもしれません。設備として換装なら入居者には費用負担ありませんからね。このバランス釜の性能ってなかなか見分けられないところもあるので、バランス釜見るときには「そこそこのデカさ」を確認した方がいいですね。浴槽はサイコロ型日本式になるので、身長の高い人には厳しいかも知れません(バランス支持の人って女性に多いです)。私は銭湯派なんですが、これがいつでも浅湯に入れると思うと(寝転がれる)なかなか浅湯ってこうガツンとこないんですよ。水圧が原因なんですが、ここはトレードオフで、サイコロ型にもいいところもあると、それは本来埋め込み式の高級バスにはかなわないワケで、やはりバランス選びのコツはパワーですね。ここは間違い無いところです。
Posted by kagewari/iwahara at 2007年04月15日 18:30
確かにうちのパワーないです原付レベルかもしれませんシャワーも養老の瀧かってくらいチョロチョロしかも大家がケチケチわからんちなんで交換に応じてくれそうにありません(あまりの強欲ぶりに不動産屋が何度も変わって結局今は担当してる不動産屋がない…)まあ、勝手に交換しても何にも言われなさそうなんですが住民のあいだでは「取り壊し」の噂が立っていたり更新が半年後に迫っていたりいつまでいるか、いられるかもわからずちょっと宙ぶらりんな状態です
Posted by 熊山准 at 2007年04月16日 02:53
あーそれは「しっこし考えるしかない」ですね縲怐。「取り壊し」の噂これは致命的ですねぇ、設備投資する意味完全に無いかと。。設備投資って2年契約の期間中に減価償却可能かって部分が判断の基準にもなるので。こういった事例を防ぐコツですが、家主さんと管理会社の媒介契約を専任媒介のタイプに希望して、きちんと公開情報されている募集のお部屋を選ぶ事でしょうね(私は物件紹介する時なんかもこの管理状況随分気にします)。家主さんと管理会社の契約がきちっとしていると、管理会社の方が大家さん業のコンサルもきちっとしているケース多くなります。引越し資金がヤバイ場合にも、部屋の内容落として無理に格安のお部屋探すなら、銭湯の盛んな地域で『内容のいい風呂無しGO』作戦もアリアリなんですよっ。
Posted by kagewari/iwahara at 2007年04月17日 00:02
「現在引っ越しを考えている」真っ最中のニンゲンです。本日見に行った物件、おじいちゃんちみたいな古い建物de平屋&庭、レトロでとっても素敵だったのですが・・・お風呂が、バランス釜でした(笑)いや、バランス釜でもいいのです。うん。いいのですが、めっちゃ気になったのは、その物件の広い浴室には洗い場と浴槽置場に50縲・0センチくらいの段差があるのです。バランス釜(古い型)は段差下の浴室壁の真ん中に設置されていましてね、左に浴槽、右半分には、無意味な空間が。壁は木にペンキ、床はタイルでもなく、砂利が荒いコンクリート。DIYでなんとか楽しい浴室にならないものかと考えましたがどう工夫しても、掃除ばっかりは行き届かなさそう。。。大家さんは「改装はしない」と断言されたそうで、まさに、>「味のある部屋でとてもいいのだけれども、バランス釜がね縲怐E・・」>な、残念な局面に直面した次第です。(笑)今回の物件への結論を出すにあたり、たいへん参考になるお話でした。ありがとうございました(T▽T)
Posted by かま子 at 2008年11月02日 19:34
なるほどですねぇしかしその内容「古い建物de平屋&庭と独特な浴室やレトロなデザイン」これは骨董的評価で賃料数万円に匹敵しますよ、(必殺銭湯にいっても借りる価値がある)趣味性優先ならレア度最大でしょう、思うに設備的な意味で賃料も安いと思われなので、コストパフォーマンス(ここは骨董的価値に対する個人的趣味性の度合いで爆発的に差が付きます)は想像越えるほど大きいと思います。なんといいましょうか「4年少々不便な暮らししたとしてもその部屋なら楽しい思い出になる」とでも言いましょうか。ある意味バランス云々として考えるより、「このレトロな世界は自分の趣味性評価でどうかしら?」こっちに力点置いて考えるのが吉だと思いますよ。
Posted by kagewari/iwahara at 2008年11月04日 13:59
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