確かにレインズは広告系のDATAベースではないから専門的知識や経験が無いと、ちょっと使いこなせない代物で特定条件を探すのは困難な場合もあるけれど、条件が厳しければ厳しいほど調査自体は「簡単」と言っていい。
不動産市場の公開情報は、基本的にはエクセルと同様なファイル形式でダウンロード可能で、賃料やu数で500件まで空室DATAをダウンロードしてソートして調査可能だしおおまかな項目はDATA化されている。
重要な事は新規の空室がある時、不動産業者はこのレインズで相場を見て賃料を家主さんと相談して決めるところだ。国土交通省の指導で基本的には家主さんと媒介契約を結び空室募集をするときには情報の公開と(一般消費者の利益としても)円滑な不動産市場の形成が義務付けられている。
ただ不動産の情報には個人情報も含まれてくるから、正規の業者間で閲覧するレインズの一般公開はほとんど不可能だし、一般公開したとしても専門的知識がないと空室を絞り込む事ができない=一般ユーザが閲覧して問い合わせしてしまうと猛烈な空反響が発生して登録業者にはこれを物理的に処理できない。
つまりレインズは『業者間の問屋DATA』であって、1戸だけの取引を前提とした消費者向けのDATAではない。
※本来健全な仲介調査会社(流通経路としては消費者寄りの専門店)が不動産業界で増える事で初めて意味を持つシステムとも言える。
と、レインズの説明はこの辺までにして話を物件探しに戻してみよう。
そんなわけで不動産市場は公開市場と言えるので、単純な話『人気のあるスペックの部屋や供給の少ないタイプの部屋は高値になる』つまり市場を作っているのは一般消費者の動向に比例しているんであって、ステレオタイプな問い合わせになればなるほど「人気のある高値の部屋を指名している」事にもなり、重要な事はこの”人気”なるものが実質的な人気だけでは無い部分だ。
■どういう意味かと言うと、不動産業者や家主にも心理的不安というのがあって、「全く問い合わせが無い」とか「内見者すらいない」という”動向”に大きな影響を受ける。
つまり
不動産市場ってのは、空反響を含む消費者動向に影響を受ける稀な市場だって事です。ここには「基本的に一点もので在庫からの供給がある消費財では無い」という背景が大きく関与していて、つまり「野菜の形を市場に合わせて揃えるように」→「極端なオールフローリング化が助長されたり」等の現象が起きる。
「高値市場に合わせる」とでも言えばいいか?
皮肉な事に家主の側からも「一点ものの自分の部屋が、どの市場に所属しているのか自信が無い」からだ。
内見における”雰囲気”が最終的な決定要因であるように、本来その部屋の価値を決定つけるのは「数値ではない」のに、
そして本当に契約する意志の無い問い合わせによって『風評相場』が形成され、同時に同じ風評が『いい部屋なる抽象概念の根拠になる』という意味不明の悪循環が生まれる。
■この市場の背景が部屋探しにとんでも無い影響を与えている。
本気で引越しする意志の無い人の風評については『たとえば「引っ越さない」選択』のエントリーで書いたとおりで、
さて、みなさんわけのわからないはなしが余計わからない世界に踏み込んでいますっ
話全体を最初からぐる縲懊怩チと俯瞰で読んでみてください。
何が見えますか?
実は求める自分の部屋のキャラクターが不鮮明で、結果的になんとなく総花的に(TVCMなんかの受け売りの)ステレオタイプな希望条件の問い合わせが増えてくると、その問い合わせを元にして市場は形成され高値市場となる。
本気で引越しする人は、この風評市場の影響を受けて「根拠の無い高値の部屋に引越しせざるを得ず」ここで業者から「人気ありますから」と説明を受ける。
なんじゃこりゃって話ですよ。
retour&Retourなんかで、古築物件を始め個性的な部屋を中心に紹介しているのは、この流れを断ち切らないとやっかいな事になるって危機感からもきているんです。
『流行』ってだけで一般消費財が一時期高値で流通しても誰も困りゃしませんが、不動産なる市場でそれが起きるのは大問題なワケですよ。
もしですよ、いいも悪いも抜きに分譲買う時の転売予測的資産価値をこの風評相場を前提に考えざる負えないとしたら?「その風評が10年後存在するのかまるで保証できない」上に「風評に過ぎないのでその人気の部屋が自分にとっていい部屋である保証は全く無い」ですよ。下手すると「単なる流行に過ぎない人気を背景にした部屋を買って、生活は不便な上にいざ転売しようと思った10年後に暴落している」なんて結果になってもおかしくない。
「無理言ってすいませんが」
この問い合わせは非常にやっかいなのです。
ほとんど「高値市場でお願いします」を意味している事が多い。
本来なら明快な優先順位を元にトレードオフが成立していなくちゃいけない。トレードオフが成立していれば「○○な部屋をお願いします、他の事は生活水準に達していれば自分にどうにかできますから」になる筈だからだ。
「○○な部屋を探しています」という選択が自己選択されないと、部屋探しそのものは成立しない、探すのは”その部屋”であってスペック(市場)では無いから。
なので、一度ユーザ側で”風評的いい部屋幻想”なるものを解体しない事には、供給側も動き様が無いんであって、抽象概念である「いい部屋」なんてものが実際にあるかのような論議は中身の無い論議を助長するばかりになってしまう危険性が高い、
「あ縲怩ネんかこんな部屋を」ってのは、個性化の時代人の数だけある筈で元々それが総花的な問い合わせになる事それ自体が問題だからだ。
供給側も風評相場ばかり見ないで”その部屋の個性にあった内容”を追求してこそ建設的なリノべになるし、コストパフォーマンスも上昇します。
「え縲怩チと○○駅縲怐宦實w辺りで、7万ぐらいの私らしい部屋」
「さて、どんな部屋が私らしい部屋ですか」
ぐらい適当な方が自分の部屋を探す世界はリアルになる。
それこそ「あーそれは地方での知名度だけの空反響が原因で意味不明に相場高いだけですから、損ですよ」と選択も現実的になるし、風評相場があるって事は規格に乗らない部屋は”反対に相場から離れて極端に安い”事を意味する。つまり相場の裏狙いも可能になる、
部屋探しが『部屋探し』から離れてしまう瞬間ってのは「なんとなく人に合わせよう」とか、自分らしさってのが不鮮明で「なんとなく見栄え重視で」みたいに”流される瞬間”なんだと思う。
”自分自身にとっての現実への肯定”なるものがキーワードになっているのじゃないだろうか、
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ここからは心理学の話なのでかなりディープです。。
「無理言ってすいませんが」の別次元の事例として、象徴的なイメージが突出する場合もある。”掘りごたつのある部屋希望”とか”元工場を改造して店舗可希望”とか、一見トレードオフが成立しているように見えて実は違う意味になっているケース。ここには大きな落とし穴があるんです。
『たとえば「引っ越さない」選択』にあるように、本来引越しや新規出店しようって時には「本当に引越しする必要性」や「本気で出店する必要性」があるのが前提になる。つまり”その引越しにおける希望”となる筈です、
この時その象徴的なイメージが”その引越しにおける条件”となると、、
「引っ越しの条件なる具体的現実が、象徴的な抽象性を条件とする」という構造的矛盾が発生してしまう。
店舗出店で言うなら、その抽象的なイメージを物件に依存すればするほどそのお店の主役は物件になるので?、、オーナーは誰だろうと。
あまりにも微妙な論議なんですが、この店舗出店における「元工場」は象徴的アイデアであるのだから、これは「このアイデアの線上みたいな=あくまでイメージであって具体論ではないって反証的具体性」によって担保されて初めてトレードオフとなる筈で、「その象徴的なイメージが具体的に見つからないので、出店できない」ってのは、これは何かが違う。
つまり、本来引っ越さない立場(不安感等から思考の立場が引っ越さない現状に立脚してしまい)からのデフォルメが発生してしまって、これが原因で象徴化に繋がり、結果的にその象徴化そのものが『今引っ越さない理由の切り札』になってしまう現象の事。
「引越しの希望条件が、引越しにダメを押す切り札になる」
謎解きみたいな話なんだけれど、象徴的イメージが選択される理由は、そうではない本体が背理として実存する証明(それがバックグラウンドにあるので象徴化が必要なのだから)の筈で、ある意味その本体がビシっと思いつかない代わりにこれを象徴的イメージで表現したいってのが動機になっている筈。
ところが、その象徴的イメージが「部屋が見つからない証明」になっている場合、この象徴化は「象徴化の抽象性の効果が別の意味を持ってしまっている」と考えるのが自然。
店舗で言えば「出店の不安(事業計画そのものに自信が無い)」住居で言えば「本来自分自信のライフスタイルの根本的転換が本体なのにここから逃れるために、シンボルの外部化によってこれを仮想化したい(”体現”すべき内容を”所有の概念”に置き換えてしまっている)」のように、無意識に「不安の投影」による象徴化になってしまい、自意識の意図とは別に希望条件が反対の意味(ダメ押し)になってしまう逆転現象が発生する。
『たとえば「引っ越さない」選択』における外野席のデフォルメが、自分自身の中で発生してしまうような。
※ここには複合的というか重層性があって、象徴化は釣りでダメ出しは常に瑣末な条件であるケースもある、これは象徴化を保守する事が動機である証明=保守されつづける=探し続ける事がそれを保守する事になってしまい、部屋を決める結論が抵抗を受けてしまうケースもある。
こうなると、本気で一度思考をリセットした方がいい。
「引っ越さない(出店しない)選択」だ、
一度チャラにすると、外部化によって代償満足していた部分(=部屋を探している間はその不安感から逃れられるという免罪符)が、現実として今の自分に還ってくる。
ここでもう一度「本気でお店を始めるべきか」とか「そもそも会社を辞めるべきだろうか」「やっぱり結婚は似合わないのじゃないか」等デフォルメ以前のテーマに話は還元されるので、そもそも引越しをきっかけに何かを変えようって初心がぐるーっと回って初期化される(笑
「ああ、こんな風に引越ししようか」、
なんていますか、さわやかな風が流れると申しましょうか、
サクっとお部屋が決まる筈です。
或いは、引越しとは別次元の結論が出るのかもしれないのです。
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『部屋探し』から離れてしまう瞬間:後編
2007年04月27日
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