犯罪者の心理をここで考えるなら
@「短時間に仕事を終わらせたい」
A「常に逃げ道を確保したい」
B「不特定多数の人物に外から見られたくない」
C「同じ捕まるなら(住居侵入窃盗と同じ罪なので)金目のものがありそうなところで仕事する方がいい」
D「そもそも捕まりたくない(怨恨や異常な犯罪の場合にはここが「その時成功すればいい」に変わる)」
そのまま番号に応じて具体事例で考えてみましょう、
@「ダブルロックが効果的」→しかし外からダブルロックには見えないため(それでも基本設備で無い場合、その部屋だけは狙われない確率高いです)ダブルロックが最も有効になるのは”独立したベランダバルコニーがザザーっと並んでいない棟”になります。
理由は簡単です、身を隠す事のできるベランダバルコニーはかなり防犯性を悪化させるので(最近シースルーのものが増えている理由のひとつ→事実上外壁型のバルコニーの無い木造アパートの方が窓側の防犯性は高い)、侵入経路がバルコニー側になってしまうためです(特にオートロックのバルコニー側の施錠率が低い事は既に犯罪者の側の既知の事実)。
屋上や2階バルコニーが侵入経路である事例も少なくありません。
A「袋小路の住宅は安全」→理由は簡単です、警察官や「何やっているんだお前」なる人物が塞ぐ道は”正面玄関部分”である確率が高いですから、「裏側から逃げられるのか」な見通しは重要で、ある意味「奥のほうがどうなっているのかわからない」であるとか、「1階が半地下構造のメゾネットで、深いドライエリアに落ちると逃げ場が無い」の構造は高い防犯性を保持します。ベランダバルコニー側が容易に裏道に抜ける等の構造には注意が必要で、この対策としては”人体感知センサーライト”が有効です。
B「内廊下クローズドより玄関部分オープン廊下型の方が防犯性が高い」→一見矛盾ようですが、玄関部分がオープンで外から見えるオートロックが効果的です(オートロックがある意味狙われやすいのは”一度中に入ったら人に見られる心配がほとんど無い”から:エレベータさえ注意していればいい)。アパートの場合も同様ですが、一時中央線あたりで頻発した「洗濯機泥棒」への注意は必要でしょう(ここも防犯マップに現れるとおり駅近や幹線道路沿い等となるので閑静な住宅街であれば「心配するとなると下着泥棒」となります、しかし最近は洗濯機泥棒の話はあまり聞かないですよね)。
クローズドの高級マンションの場合(実際管理人さんがいなくても)”管理人室を備えている”とか”外からエントランスが広く見通せる”や、”地味で堅い事業ビルに見える”外観である方が望ましい事になります。
デザイナーズであれば「ベランダバルコニーも無し」「エントランスからしてデザイン性が高く”どうなっているのか仕組みもよくわからない”」ぐらいの意匠である方が望ましい事になります。
言葉としては妙な表現になりますが
「犯罪者をいかに不安な気持ちにさせるのか」
「犯罪者の視点からも目立たないカモフラージュ(チェスタートンのパラドックス)」
という視点ですね。
C「犯罪の悪質性から見ていくと、”如何にも高級マンションです”という外観は不利で、ファミリータイプも混在する本格分譲マンション(管理人常駐)で威厳のある作りの域に達している(相手に格の違いを見せる)”Teorema”的な物件を除く、
”所謂築浅マンション”は狙われやすい」
犯罪の種類にしても確かに木造アパートの1・2階にも空き巣は発生しますがDATA的に窓ガラスを割リ型の空き巣狙いが多くなる→言葉の表現は悪いですが”単価も安く素人度の高い犯行(時間的にも短い)”が目立つ事になりますから(2階の場合には洗濯機や:アパートでディンプルキーは少ないのでピッキング)、
”同じヤマを踏む”にしてもアパートを狙う犯罪者と高級マンションを狙う犯罪者はタイプが違う事になります。
最も狙われやすいのは「いかにも可処分所得の多そうな女性が好む築浅マンション(オートロック)」となります。誰が考えても”ブランド品や貴金属が見込める”からです。(オートロックのベランダ施錠と同様、築浅オートロックにこのタイプの女性が多い事は犯罪者の間で既知の事実)
ここは同タイプのマンションを好む女性の消費性向を見ても(彼らの側で)予測性の高い部分でしょう。
心理学的に見ても、リスクの高いヤマを踏もうと考える犯罪者の方が悪質性や粗暴性も高いと見るのが自然で、ここでも「遮音性が高い方が防犯上不利」にもなります。
D「犯罪目的で侵入できない部屋は無い」=「彼らに空けられない部屋は無い」
ここが重要で、最初の頃に話した”ダブルロックの有効性”はここに尽きます。空けられたにしても部屋の前で1時間も座り込んで鍵空けしていたら100%逮捕される(と、心理的に犯罪者なら考える)ワケで、ベランダバルコニーにしても”見えない部分にダブルロックがある”のは同様に有効で(一般のサッシは鍵の位置が一定で窓割りで空けやすい位置にある)、外から見てもダミーで構いませんから”センサーか?”な装飾を”外から見えるように”施しておく手もあります。
又、窓って事で言えばワイヤー入りの強化ガラスに防犯性が高い事は言うまでもありません。
ポイントとしては、住居の性能に求める防犯性は「難攻不落」な要塞(常駐の武装警備員無しには機能しない)のようなものでは無く、むしろ「どうなっているかよくわからない」や「なんだか面倒な事になりそうだ」な要素が最も防犯性として有効になります。
極論ですが「ワイルドでハードボイルド」な部屋の方が基礎的防犯性は高い(犯罪者の側もハードでタフな入居者がいそうで怖い上に室内に貴金属を置く人格傾向の入居者比率も低く見える)事になります(勘違いしたガキが缶コーヒーを置くぐらい→しかし自動販売機の明かりが防犯性に寄与するのも事実)。
※怨恨やストカー等個人的な関係として”狙われている”ケースに対抗する内容を物件に求めるのは限界超えますから(警察に相談する話なので)、そこまで考える(アメリカのように自宅にショットガンなんて話になりますので)ことは日本においては適切じゃないでしょう。
このように防犯性は犯罪心理や立地外観含めて複合的なものであって(ある意味今回の捜査も防犯カメラに注目する等物件概要を重要視し過ぎなのじゃないか的な心配もあります)、
昨今業界では「防犯カメラに死角はありませんか?」なる話が実際にあると耳にしますが、、
防犯性はそのような個別の論議では語れないものです。
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「社会面から」(2)
2008年05月02日
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