前回レポートの流れから各論を考えてみると
何故に東京都市部地元住民に1Rマンションが倦厭されているのか?
ここから詰めて考えてみると、
私が業務や取材中に実際に建築中の敷地周辺で大規模な反対運動が散見されたのは「新宿区」「品川区」「杉並区(マンションそのものにアレルギーがある)」「(1Rでは無いが高層マンション建築反対で)港区」といったところ、
この住民感情という部分は、ニュース文面にあるような「単身者のゴミ出しのマナーの悪さや自転車の路上駐輪が問題化」等に代表されるものとは言い切れないのは明白と言える。
目立って指摘しやすいポイントが”ゴミ出しや駐輪マナー”というだけで、心理的に言えば住居として昨今の『新築1Rマンションコンセプトそのものへのアレルギー』があると見た方がいい、
そこで地元住民の心理的な部分を考えてみると、
最近の新築マンションの傾向は、地元の地主が資産運用でささやかに低層のマンションを建築するという方向では無く、ある日突然「聞いた事の無い開発会社が都市計画ギリギリの投資型マンションをドーンと建てる」的な印象になる。
(分譲マンションの場合はそのスケールが大きいし土地の収用からかなり長期間地元住民と折衝が行われたりするので環境が大きく違う→しかし”幾分”キャラクターは違うけれども低層地域の住民に反発が無いワケではない)
町内会としては回覧版を回す事もできないし(そもそもオートロックで中に入る事もできない)、どんな審査でどんな入居者が入るのかも説明されない状況で、「ある日突然”若い人中心”のシングル向け1Rマンションに50人規模以上の住民が突然”お隣”になる」事が問題なのだと考えた方がいい。
”ゴミ出しや駐輪マナー”が問題なのは、地元家主系ならそのまま家主宅に町内会として注意するのは簡単だし、地元不動産会社の管理であればお店に直接相談するのも容易になる。
しかし、”ゴミ出しや駐輪マナー”の事例では経験的に「管理会社が何もしない」ケースの体験を一度や二度は地元住民は必ず経験していて(それだけ”管理しない管理会社”が存在するのも事実)、それが風評となり輪をかける形で強い警戒感となり1Rマンションへの反対運動が強くなっていると考えるべきところに思う(管理形態そのものへの反発と見た方がいい)。
そこで『管理』の面で不動産業における管理業務を考えてみると、通常管理の業務委託コストは「賃料の5%程度」で(管理費は賃料名目を経理的に分けているだけでこの場合全く関係無い→ここで言う賃料とは管理費込みの賃料)、その5%という数値もかなりガチットした委託管理のケースで一般的には不動産会社は契約更新費用が管理委託料となる場合が多い(それでも更新費に事務手数料25%とか50%のタイプだと更新費1ヶ月が全て家主に渡っていて管理会社はその事務手数料の25%から50%の分だけ委託費用として計上している)、更新が無い場合には契約時に家主から支払われる広告募集手数料の一部が管理経費となる。
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管理の大変なマンションで(管理コストは入居者戸数で決まる)一戸辺りの賃料が安い場合管理会社が最初からコスト割れするケースが多くなるって事。
ここは近隣の家主さんのアパートで、管理業務も”家主さんが主体”で管理会社は”取り次ぎだけ”とかのパターンの方が不動産会社も楽って場合も多くなる。
逆算すると、比較的高層の1Rマンションの場合しっかりした管理を行うと管理会社がその管理業務で赤字になる可能性が高まってしまう(管理業務をきちっとするには家主から応分の管理委託料を計上してもらう媒介契約を結んでおかなくてはいけない)。
地元住民にとって、その管理会社が「何処の誰なのかもわからない」状況だと、管理そのものを期待できないし、「いかにも営業店店舗」だと審査そのものの信用性も担保できないし、最初から管理コストを計上していない(管理するつもりが無い)会社の可能性だってある。
又、ここには入居者に対するイメージがあるのも事実で、
以前のエントリーで書いた事があるのだけれど
参考:男の部屋探し
上記のエントリー記事中の以下の記載部分
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そんな時私は「TVドラマや映画の設定」を思い浮かべます。
つまり「こういう配役の人はどんな部屋のシーンでどんな部屋に住んでいる前提にするとハマルのか?」です。
それは概ね主役級の所謂「いい者」は、木造アパートなんかの和室に暮らしている設定の方がハマリますよね、
ついでにお部屋も和室だなんてな方が、無頼な男のイメージに合ってたりします。
劇中だいたいこういったドラマなんかでは敵役が登場しますが、その人物は洒落たデザイナーズなんかに住んでたり等。
静かな木造住居や、年式の落ち着いた分譲マンションが広がる地域に忽然と新築1Rが登場し、「その新築を希望する入居者」=「そんな落ち着いた街のテイストを評価しての入居では無い」=「街の雰囲気を評価する入居者なら木造アパートや、年式の落ち着いた既存マンションへの入居希望となる筈」→「結論地域を全く評価しておらず、新しいマンションの室内”オートロックの内側だけを評価している入居者”となる」=「地元社会間との社会性がコンセプトから欠如している(言うなら”地元への愛着”を期待できない)」→「極端に言えばそこに新築1Rフローリング・オートロックマンションがあるから引越したのであってその町目に好きで引っ越したワケではない」
こういう心理的な見方(当然これは一部余談だしイメージに過ぎないけれども、そう地元住民が考えてしまう側面には合理的根拠があるのは事実)を、背景に「突然町内に登場する50人規模以上の入居者そのものに対して警戒感がある」のも確かになってしまう。
又、不動産の現況から見ていくと供給過剰を背景に(現実昨今の不動産値上がりは明らかに”投資ファンド”と政府による金融救済的政策誘導によるミニバブルだった)、想定される利回りを確保できるのか『最初から怪しい』のも事実で、
こういう投資向け建築のマンションは想定利回りが悪化すると「割と簡単に一棟売りで売却されたりする」→今の建築主や管理会社と信頼関係があったとしてもある日突然「全く知らない会社に売却される事もある」ので、いろんな角度から地元住民の不安感を助長しているのは確かになる(地域で長年大家さんやっているオーナーが管理するアパートとは完全に背景が違ってくる)。
店頭効果や内見効果の高い新築や築浅マンションは、一部の問い合わせ顧客には人気(古築物件等のレポートが多い当社への合問い合わせの過半は”年式不問”になるので不動産会社が正しい情報を伝えていれば”新築や築浅信仰”は解消されると見ていい)でも、地域住民からは歓迎されていない構造が元々ある。
※現実建築としてみても、世界的に日本の建築は築浅志向が強すぎて”建替えし過ぎ”って意味では根本的に現状の在り方が健全ではない(建築会社の利益優先や過剰広告の風評等)というファンダメンタルがある。
前回のレポート『条令の内容』を評価してみると
「25u以下のワンルームマンションを一律に建築禁止」という”一律”の部分には無理があるように思う。
不動産には都市計画や用途指定ってものがあるのだから、『許可できる地域を特定』する等細かい運用があってしかるべきでしょう。
特に20u以下等のマンションは高度の管理をサービスパッケージにする『ミニマルコンパクトなコンセプトの将来性』もあるので(ここは1年契約として礼敷も引き下げ→若干賃料をその分引き上げてトータルコストをならし→きちっと管理委託費用を計上して→家主も管理会社も入居者も利益を確保して地域住民も安心できるコンセプトの可能性がある=20u以下の賃貸の場合長期賃貸の比率が下がるため需給バランス的にも望ましい)、行政には細かい運用面含めて検討してもらいたい。
※20u以下における長期賃貸は木造アパートの方が適応性が高いし(築浅マンションの場合”上ものコスト”に変化が無いので歩留まり的にu数が下がれば下がるほどコストパフォーマンスが低下する:郊外に出ても築浅マンションの下限賃料がそれほど低下しない理由→古築リノベーションの場合でもマンションより木造アパートの方が換装後の建築部材のレベルも上位であるケースが多い)、マンションで言えば上ものの原価償却的に築年数の落ち着いているものの方が長期賃貸の適応性が高い。
現行のままの条令運用だと名目利回りの低下で、新築マンションの建築そのものが停滞する結果になるでしょう(それもある意味歓迎だし現在の環境がそういった方向であるのも確かだけれど)。その中でコストパフォーマンスの高い25uストディオが増えていくのならこの条令は「万全では無いがむしろ歓迎してもいい内容がある」と評価してもいいではないか。
このテーマはまだまだ論議していかないといけない部分が多いので、又回を改めて継続して考えていきたい。
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賃貸における諸問題(3)
2008年08月16日
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