『こんな部屋があった』
つまりこれは、retour&Retourもそうなんですが、ブログ記事での紹介というのは雑誌媒体における特集記事のようなもので、構えとしては空室情報であっても募集広告ではありません。
(retour&Retourの場合にはリアリズム的に実際の空室情報を元にしているのでそんな風にも見えますが、時折記事中でも説明しているように趣旨は現実の情報を元に東京の賃貸を日々語るというブログになります)
ブログの運営的には、この『住まいの心理学』において重要なコンテンツとなっている『東京建築日和”Teorema”』のようにアーカイブスとしても意味のあるレポートの方が本道かなって一面もありですから、ここはretour&Retourとキャラクターを変えて、過去にこんな部屋があった的な話をいくつか紹介していこうかなと考えたワケです。
事例が古いと現実の相場からは離れてしまますから、物件概要的な詳細は記載できないのでむしろ部屋固有キャラクター重視で話を進める予定です。
そこで第一回として「山手線五反田〜恵比寿方面某駅にあった古ビル系ハードボイルドマンション」を紹介しましょう。
こんな部屋があった、
ええ、一見なんてことのない古いマンションかと思えるでしょう(笑
しかし、そこはプロが見ると違うんだと、
築年数は記載無かったのですが、間取りを見ればトイレが和式ですからおおよそ検討がつきます。
しかもこの作りですよ、
居室の襖をキッチン側と廊下側双方取り外すと一本柱が部屋の真ん中に取り残されるパターンってのは昭和レトロ的造作として滅多にお目にかかれないもので(往年の分譲マンション3DKなどでリビング手前・中間の和室などで見られたパターン)、これが20平米相当の小規模1Kに存在するのが又珍しい。
賃料は現在の格安マンションのわかりやすいゾーン(えー7万前後みたいな)でした、
このタイプの特徴は和室なのに妙に洋室よりカッコ良く見えるところで(そういう造作の和風cafe的デザインと考えていただければ)、ある種のナチュボーンデザイナーズに属するんです。
昨今は和式トイレで内見的には一発NGが一般的ではありますが、この時の依頼主の方は随分フランクな方でその面白さを感じ取っていただけたのか「ユニーク枠」として候補となり、内見となったのです。
(依頼主の方はオーソドックスなアパートが本命でしたから申込みにはならなかったのですが、この部屋自体の評価は相当高かったのです)
いきなり期待感が高まったのは内見のアポイント取得(仲介案内の場合名刺のFAXなど業者間のでの確認としてアポが必要)の時です、
管理会社さんのしょっぱなの一言は「お客さん男性の方?うーんでも本当に見ますか、とにかく古いんです。入り口で驚かれてもあれなので、女性の方とかならお断りしたほうがいいと思いますよ、本当に。」
(実は昨今昭和レトロ系は女性の方に評判がいいのでこの判断は不動産屋さん特有の勘違いなんですが)
実際依頼主は男性の方だったこともあり、
「いえいえ、古い感じはわかりますし、事前に説明の上”そこにも惹かれる”という趣旨でのない見希望ですので私もしっかり紹介していこうと思っていますからご安心ください」などと説明して、アポイントを取得したのでした。
現地に到着するとそれはそれは古いビルで、コンクリートの塊のようなガッチリした作りに骨董屋さんにもなさそうな電気メーターがエントランスに並ぶような例のあの感じのマンションでありました。
(印象的には”ここはブルックリンですか”みたいな)
実際棟としても完全な洋風の作りで、室内に洗濯機置き場は無く、屋上置きの屋上干しとなってまして(アパートメントで各室に洗濯機を置くのは西洋では一般的では無い)、住民の方も堂々と屋上にmy洗濯機を設置してして洗濯物もそのまま干しているみたいな世界がありました。(映画で御馴染みのように古いアパートメントでも通常簡易のオートロックが付いているので屋上干しとか全然平気だったりする)
ちょっと暗めのコンクリートの階段(ほとんど石みたいに硬化している)にはちょっとパンクな方々の備品なども気軽に置いてあったりで、ちょっとハードボイルドなお姉さんなどがコツコツと歩いてきたらどんなに絵になるだろうかなーんてビルなのです。
(勿論飲食店街のちょっと裏みたいなロケーション)
室内も予測を超える内容で、
トイレのドアは油の抜けたあの軽〜いぽやーんとした木製の奴で、バスルームはちょっと広さが残念でしたが(西洋的に考えると唯一の設計ミスがバス・トイレ同室のレストルーム形式となっていないところでした)、ペンキ塗り主体のキッチンや、そのレトロな作りは素晴らしく期待を超えた内容だったのです。
6帖和室にも特徴的な部分があって、
間取りで言えばキッチンの対抗面にある”小窓”、
なんとこの窓は、リアル”掃き出し窓”とも言われる『地窓(じまど)』で、
現代的なデザイン的には一階リビングなどで外に絶妙に配置した小グリーンが見えるように作るとカッコいいどちらかと言えば一階向きの造作なんですが(店舗の場合なら窓は擬似で照明を入れて鉢植えのグリーンを配置とか)、
この窓が4階の部屋にもあったみたいな(笑
窓に合わせて寝るとちょうど頭が涼しいような窓なのです。
(間違っても掃除で掃き出してはいけない窓であります)
凄かったですね〜
これだけの部屋は滅多に無くて、しかも当時としては相当賃料も安いゾーンでしたから申込みには至りませんでしたが、今でも時々思い出す部屋でした。
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新しいカテゴリを登場させます
2010年08月24日
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エレベーター付
ワンフロア3戸(最上階の6階は2戸)
38u
10万3千円⇒9万3千円、礼金2⇒1ヶ月
和室が6畳と4.5畳(畳は張替えてもらいました、襖は絵入りの大昔風)
K3畳(廊下と同じPタイル)
重厚な壁は思いっきり蹴っても鈍い音
(川口も同じく、ちなみに一昨年の春先に内見した住友目白台ハウスは音が響きました)
バス(洗面台付)トイレ別々(壁床タイル張り)
全部屋に窓あり(寝室の4.5畳間は鋳物製の網戸に下部が捻り押し開ける長方形の窓が並んで2つ、キッチン、バス、トイレは同じく捻って押し開ける正方形のすりガラス窓)
下駄箱は壁に埋め込み(背中合わせが6畳の押入れ下部)
トイレ手洗いは手水(筆記体でTouyouTouki)
キッチンにはタイル張りの洗濯機置き場
押入れ1間半(全て天袋付)
但し・・・
バランス釜(最新式)で夏は普通に湯量が出るが冬場はちょろちょろ
キッチン、バス、トイレは北面のため煙突の排気口からは凄まじい北風
といった掘り出し物でした
00年以前はど真ん中でも面積ある掘り出し物件ごろごろありましたが、日本の体質であるスクラップビルドで大挙として消えて行きました
1階はワンフロア1戸
下駄箱(低く、手彫りの引き戸、中は二段構え)の背中合わせは寝室4.5畳の押入れでした
38uという広さがあったのも珍しい。
(昨今も小規模なものならまだまだ古いものあるんですが35u超えるのは数少ないですね)
躯体ががっちりしているならバランス釜を壁埋め込み給湯などに換装して、まだまだ現役できたでしょうに。
※現代なら思い切ってソーラー込みの最先端の何かあるかもです(補助金も期待できますしね)、この辺の設備はまだまだ新しいもの出てくるでしょう、
九段ともなれば(上物減価償却終わっても)底地の固定資産税や相続税など含めての改築となったのかもしれませんね。
(個人的には少なくとも不動産に対する相続税は無しにすべきだと思ってます。その代わり預貯金・有価証券に対する相続の課税額を上げるとか、)