ズバリ心理学的に考える暮らしってテーマにおける重要テーマのひとつです。
一回だけで結論にも達しないと思われるので、予めシリーズ物前提で話を進めようと思います。
ザックリ言えば「広けりゃいいってもんじゃない」という話(笑
逆に言えば「広さを求める理由は単なる広さでは無い」というオチがあるのじゃないかという仮説でもあります。この場合『広さの質』ですね、
現代社会的に言えば省エネ効果含めて経済的合理性で語られる可能性すらありますし、賃貸住居で考えれば大幅に賃料を節約できる可能性(ここも純粋に節約というより拡大縮小を弾力的に運用できる可能性と考えた方がいい)、同時に法人におけるノマド的な自宅SOHOの可能性を拡大する論旨でもあります。
(※そのまま「事務所は広けりゃいいってものじゃない」「事務所における広さの意味は単なる広さが目的では無い」とそのまま重なる論議です。同時に人員の増減に対して無限に対応可能になります。)
『プライバシーエリア論』ってのがありますね。
住居的には『プライバシースペース』って事かなと思いますが、
災害時の避難所などでも実戦的ストレス緩和ノウハウとして定着しつつありますし、
(※段ボールんど簡易的な間仕切りでストレス軽減プライバシー保全効果が期待できる)
これはSFチックに言えば心理的な「個々人の結界」のようなものです。
(満員電車の中における現象としては物理的空間ではなく、心理的イメージとしてこれが確保可能な可能性も暗示しておりますが←タイムリミットのある話でしょう。)
話の参考としてわかりやすい話は「猫の縄張り論」。
子供時代のイメージからすると「自分の陣地的発想(場合によると幼児はここに想像上の人格を登場させる場合もある)」、
千利休の一期一会的な『ミニマルコンパクト=無限空間の概念』、
建築の世界でも著名な建築家には狭い部屋としか考えらえない空間を追求する方向性は常にありますし、
コンラート・ローレンツの動物行動学における「閉鎖的区間における群れが攻撃心理に陥る観察」も関係のある話だと思います。
↑
これらのものが追い求めているものは何だろうかと考えてみます。
■「安心する空間認知」
ここを考える時、果たして人間の意識や実効制圧力含めてどんぐらいの空間が”個人のエリア足り得るか”ってところから考えなくてはいけません。
自分の実行力が及ばない広さがあればかえって不安感を増大させてしまうからです。
ひとつの参考が、
昭和の文化住宅構想時に研究された「3帖間は妥当か研究」です。
それまで日本の和室における最少空間は3帖間であり、今現在でも古築アパート2Kなどでは珍しい3帖間の部屋が残っていたりします。
(※勿論この3帖は江戸間ですから現在の築浅マンションで想定すれば4帖近い広さがある。)
この時政府なり住宅公団なりが出した結論は「4帖半がベター」という結論でした。
当時の詳しい想定がわからないので、家財を置いていたのか?だとか、部屋の出入り口は引き戸なのかドアなのかもわかりません。
ですから一部想定ですが、「3帖間時代」にはコンパクトな小机と布団が敷ける広さの想定だったり、布団は敷かずに書斎だけの用途だったかもしれません。文明化の中で机一つとっても大型化した時代を背景に(机の大型化による奥行損失は想像以上に大きい)、無難な線で「4帖半」だったのではないかと思われます。
(確か千利休の3帖間も出入り口からして小さく、客の出入りは庭側からなどプライバシースペース的には3帖以上の有効床面積が想定される。同時に利休の居住地域から逆算すると江戸間より広い京間じゃないでしょうか。京間は江戸間より18%ほど広い、)
かなりアバウトですが『おおよそ江戸間4帖前後』が居室におけるプライバシーエリアだと仮定して話を進めてみましょう。
(箪笥や鏡台などを長方の一片に並べた後の6帖間の空白部分の広さもそんな感じになるでしょう。)
江戸間:1.54u 1.54×4=6.16u
マンションの場合壁芯計算と実測とで勿論誤差あるのですが、
仮にマンションの1R最少単位を逆算すると『ベッドを置かない書斎セカンドルーム』という用途であれば=12u〜可能
『ベッドを置くなどひとり暮らし住居として考えると』=16u〜可能(実質17uかな) ↑
応用編で言えばベッドではなく布団の万年床作戦やマットの直置き作戦の場合(寝具の上も日常ゴロっと転がるなど上部空間は空と認知されるので)14u〜可能かもしれない。
▲勿論室内に洗濯機を置くと大きく状況は変わります。
洗濯機の横で寝る人はちょっと珍しいでしょう。
洗濯機は分類的に『家具では無い』からです。
洗濯機を配置すると実質「浴室洗面エリア(独立洗面の有無はともかく)」が認知される空間が必要になってくるので→現代的な20u〜という状況に至ってます。
▲この辺を一気に解決しようと試みたのが「1Rストゥディオ設計」であり、
(ストゥディオの概念は省略)
西洋建築のマンションの場合、そりゃ西洋のスタンダードが設計上も整合性高くなります。(米国は木造メインなので例外)欧州では洗濯機がキッチン付属設備であることが少なからずあります(欧州は中世のペスト禍の経験から紫外線消毒など全く信用しておらずシーツなどを熱湯洗濯により消毒可能としてキッチン付属となっていたりする)。同時に、
(ここは米国なんかがそうですが)ある程度の規模の住宅の場合『夫婦の寝室に付属設備として専用バスルームがくっついている』のがデフォであり、
両者を掛けあわせて設計すると、
デザイナーズマンションなどでお馴染みの居室からダイレクトにバスルーム入口があり、居室内にキッチンこれに並んでドラム式洗濯乾燥機というストゥディオ設計になります。
概念としては「水回りと居室」を分離せず居室設備に取り込んでいる発想です。
↑
いかんせんこういうタイプの設計は現在デザイナーズや高級マンションに限る場合であり、なかなか古築リノベーションでも採用される事は多くありません。
■しかしですよ?考えてみてください。
前述のストゥディオ設計って、高齢者ひとりぐらしに最も適した”ワンルーム仕様”だと思いませんか?
昨今一戸建てなどでも高齢者の居室の改装として「押入れを壊してそこに個人専用バスルームを設置」なんてパターン少なくありません。
(脱衣時の温度変化のリスクや実際のところバス・トイレが寝室ダイレクトなのは肉体的にも俄然楽ですから。)
木造戸建て的生活は家族世帯を中心にしたものでしたから(個人用木造平屋などという贅沢な造りもありますが)、都市生活や人口集約などマンションなどにおけるシングルルームの黄金律的設計を考えた場合「1Rストゥディオ」は同時にミニマルコンパクトを考える上でのベースになるのではないかと思うのです。
※勿論「洗面台所分離」の日本的暮らしを考える場合には木造アパート1DKが最強であるのは論議の必要ありません。
(だいたいのケースだと設計は自動的にB・T別となるケースが多い)
今回このパターンの話が出てこないのはテーマが『ミニマルコンパクト』であるからです。
<つづく>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『ミニマルコンパクト論』(1)
2012年10月06日
この記事へのコメント
この記事へのトラックバック