事実上シリーズでお伝えしたミニマルコンパクトを受けて逆説的に日本式建築の代表として”DKスタイルの部屋”について補完しておこうと思ったワケです。
ザックリまとめてしまいますと、
和室のある1DKや2DKの部屋は古くから(バランス釜時代から)概ねバス・トイレが別です。
ここにどうして和室との関連があるのかと言えば(木造アパートであれば特別説明の必要ありませんが)マンションの場合には床や壁仕上げの工法が何種類かあり、場合によっては床コンクリート直張りに近い床工法もあれば、デザイナーズに代表されるように壁仕上げもスケルトンでコンクリート打ちっぱなしもあります。
しかし和室の造作から言えば、コンクリのシェルの中に木造和室の部屋が造られるような形になります(間違っても畳を直に敷くとかないので)。
これは事実上床仕上げもデッチフロア形式になり=バス・トイレ別も容易になるんです。
何のことかよくわからない人いるかと思いますので更に補足しますと、
■3点ユニットバスなどの床は排管部分かさ上げされておりだいたいがその排管の先は他の排水経路と同様にパイプスペースに向かいます。
ですから仮にバス・トイレ別にする場合でも自由なレイアウトに設置できないのです。(廊下部分も配管を通せる空間をかさ上げしなければいけなくなったりする)
時折豪華水回りデザイナーズで居室と水回りの間に”段差”があるものありますね、これは排管通す空間を作るため水回り部分だけ床をデッキフロアでかさ上げしているからです。
マンションの場合には排管結露の問題もあるので、できればこの手法は取りたくない。バス・トイレ別に設計する場合もキッチンまで一列に並べるなど、”なんだかんだで”平米数を食う設計が多いんです。
(その関係で案外マンションの場合だと縦長過ぎの部屋の方がバス・トイレ別に設計しやすいといえなくもないですが、)
しかし日本式建築でコンクリのシェルの中に木造和室を作っちゃうような構造であれば(前述の保守管理の問題はともかく)床は居室まで全部かさ上げされているワケなので、どこにデッキフロアを作るのかで悩む事ありませんから、和室イメージからしても日本建築なわけで自然と『台所とバス・トイレ別』の構成となり「○DKでバス・トイレ別」の形式が多くなるワケです。
和室の場合天井造作も必要になりますしね、
■勿論昨今の洋間志向もあって、所謂伝統的な日本式バス・トイレ別設計はほとんど消えておりまして、マンションの中堅ファミリータイプに見られる設計は「言うならば広いレストルーム(基本はバス・トイレ同一)に仕切りを入れて浴室とトイレ洗面を分割している」構造となり、日本式DKタイプのバス・トイレ別と設計意匠から違ってます。(日本式建築におけるバス・トイレ別は昔の水洗トイレ以前の戸建建築の影響もあってトイレをなるべく廊下突き当りなど”端”に配置するもの。←結果昔の日本建築ではトイレ=寒いという印象もあった。)
事実3点ユニットの効用を積極的に宣伝する管理会社などでは「バス・トイレ別より3点ユニットの方がトイレが寒くなく快適」なんて説明を目にする事もあります。
ここまで読んでい頂ければ「なるほど木造アパートなら設計上の制約も無いのでバス・トイレ別が多い」という結論も出てきますが、
▲「そのとおりです。」
木造建築であれば同時にベランダ・バルコニーへの物干しも合理的な方法になります。居室のデザイン的なポイントは設計優先ならシングルの場合なら腰高窓が正しく(掃出し窓は廊下から縁側であるとかリビングの設計なので本来は寝室メインのシングル向けに掃出し窓はおかしい)、掃出し窓になっている場合ならリビング型設計になりますからデザインは構造ではなく「カーテンの選択が重要なポイント」になります。
(カーテンを重視しないと実際リビングからの景色が洗濯物ってことになりますし、)※外見的に洗濯物干しNGのマンションの場合これは同時に室内からの景観上の意味でもある。
更にマンションの場合には高層階の問題や特に分譲マンションのバルコニー外壁外や手すりが占有部分では無くて共有管理部分となる点などから、構造的なところからも各管理会社の本音はベランダ・バルコニーへの物干しは規制したいのが本音です。他にもマンション特有の問題として入居戸数が多いためその防犯性や、中高層であれば建築基準上整備された公道沿いにしか建築できないため排ガスの点からなどべランダ・バルコニーへの物干しには合理的ではない部分が多々あるんです。
この問題は昭和のマンション黎明期からわかっていた事で、ヴィンテージマンションなどで時々「サンルーム」というものを見かけます。この「サンルーム」とはベランダバルコニーを解放構造ではなくって窓で囲って(日本建築の昔の縁側沿いの廊下みたいに)物干し場としたデザインです。←この「サンルーム」不評だったのか現在の設計ではほとんど見かけなくなりました。
■ことほど左様に「本来バス・トイレ別の日本建築」を希望する場合
木造戸建てや木造テラス、木造アパートをマストとするのが早道というか設計上も居住的にも合理的判断です。
マンションの場合にも確かにファミリータイプであれば必然的にバス・トイレ別がメインになりますが前述のように効率的設計は難しく(それ以上にマンションにおける3DK以上のファミリータイプは廊下側の部屋の空調設置に構造的難易性がある)、クオリティを重視する場合には「常に少し広めの平米数」を念頭に置く方が結果も良かったりします。
(どうしてもマンションにおけるB・T別フラグは賃料が上昇しやすい。←3点ユニットとのCP比較は段違いに差がつくことも珍しくない。)
ドラム式洗濯乾燥機の急速な移行や、台所設計からカウンターキッチンなどの設計意匠以降も建築の非木造化との関連あるのじゃないかと思います。
(台所には通常窓があるものですからね。窓が無いキッチンが設計上多くなるマンションでは採光という点からカウンターキッチン出てきたのじゃなかろうかと思ったりもします。)
ところが困った事に昨今の建築は日本全体でも6割以上が非木造であり、日本式建築の居住性を担保できる部屋であるとか家は減少傾向にあると言ってもいいでしょう。
(東京の場合は異例なぐらい木造アパートがまだまだ残っていますが、廉価なシングルタイプがやはりメインです。)
『賃料が上昇してもバス・トイレ別を選ぶのか(CP比ではバス・トイレ同一と大きく差がつく)』
『バス・トイレ別を優先して木造マストとしてみるか(廉価なシングルは多いがレベルの高いものは母数が少ない一面も)』
現代社会の場合「バス・トイレ別」その判断に難しいところやはりありますね。
(やはり日本建築は「木造戸建て最強伝説」という結論でしょうか、)
●プロ的には「バス・トイレが非常に高いレベルでマストな場合」
少々オンボロでも木造アパートをメインにしてみるだとか(通常リフォームでもリノベクラスの大規模改修している部屋も珍しく無いです)、広範囲で木造戸建てやテラスを探してみるって作戦のがあたりはいいいように思います。
逆に「マンション好き」的フラグがある場合には(予算に余裕がある場合は例外ですが)、「マンションとバス・トイレ別を同時にマストにする」のには論理的に無理が多いので、優れた部屋を多数捨てる事になってしまうことは断言できます。
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日本建築『バス・トイレ別論』
2012年10月26日
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