所謂”景観”って奴ですが、内容的には『日当たり幻想論』のパート2みたいな感じになるかもしれません。
昨今タワー型分譲マンションあたりだとこれまた壮大な景観って事にもなるでしょうけれど、4階超えると高度恐怖症的に本当に怖いと感じる方も意外と少なくありませんから、何から何まで「所謂景観重視のが内容が上」とはなりません。
事実昨今のマンション設計は、窓に関して正直間違っているというか(勿論建築士さんはわかっているのです)、巷のイメージを優先し過ぎて無理のあるパターンも少なくありません。
往年のビンテージなどの場合では(勿論例外もありますが)この辺風評などでは無く、十分に基礎にのっとった設計も多く、高層階では『腰高窓』採光重視する場合『スリット式やルーバー式』『天井付近に専用の採光窓』『バルコニーレスでサンルーム』などで構成されますから、
所謂「戸建の1階リビング専用ともいえる『掃出し窓』を高層階にも」っていくらなんでもこれは無理があるのではなパターンがデフォルトのようになったのは現代になってからかと思います。
(※現代作でも超高級建築高層型ではしっかり窓は『腰高窓』+ベンチチェストのような仕様で窓の外には基本出無いスタイルだったりします。)
基本に戻って考えますと、
戸建1階リビングが『掃出し窓』なのは勿論庭に出るだとか洗濯物を干すなど出入り口としても利用するためであり(都内の狭小住宅の場合は干場が屋上テラスみたいな雰囲気の造りも多く上階から出るパターンもありますがこの”昭和の物干し場”って現代的に解釈すればルーフバルコニーの事です)、南向き方位による過剰な日照もテラス側のひさしでコントロールすることが前提となってます。
以前”数億”の注文住宅を取材した事ありますが、1階リビング全てをサンルームにしようと天窓まで導入して南向きに”造っちゃった”オーナーから直接「もう大失敗で、後から専用の電動ロールスクリーンを導入するなど後が大変だった(熱射地獄)」話を聞いた事あります。
このブログでも何度かレポートしてますが「日当たり」とはテラスや庭への”当たり”でありまして(言うならば窓の外直下まで)、所謂中高層なりの集合住宅上階まで日照対策無しに日差しが室内に入る部屋を想定したものではありません。
(思い切り室内に日照が入る事を前提としているなら「西向きベスト」になっていた筈で出ありまして←西向きがキツイという話も鉄板の常識ですよね。)
そもそもが巷間伝わる南向き信仰の根拠のひとつは、南中の日照角度が最も真上からに近いため(特に真夏は角度的に室内に一番日照が入りこまない)でありまして、極端な話「室内に日差しを入れないため」でもある訳です。
(なので高層ホテルとかで”真南向きの部屋”を特別に希望する人って滅多に聞いた事が無い。マンションに並ぶ高層建築で最高級なのは勿論『ホテル建築』です。みなさんホテルの構想階で『掃出し窓』でベランダバルコニーって想像します?)
■日当たりのいい部屋信仰の根拠となるのは、
『一戸建ての1階庭側リビングの事』でありまして、
(木造アパートなら1階の環境が2階にも及ぶともいえるので、上階でも南向き選択はあり得る。)
元祖日本建築であれば日差しを浴びるのは縁側であり、事実上オープンサンルームと申しましょうか、そういった構造で室内への日差しはコントロール可能な状態で設計されてます。前回までの『バス・トイレ別論』や『台所論』にも共通するように「木造建築が前提」と考えた方が正しいのです。
(※完全に西洋式設計の中でもよくある中庭式とかなどの場合、リビングは庭に面する事が前提で個別に部屋の方位とかの話にはならない。)
しかし施工主は風評と売れ行きの関連性死活問題ですので、
(間違いだとわかっていても)
中高層階マンションをバシバシ真南向きかつベランダ側最上階でもルーフバルコニーが無くても『掃出し窓』で、日照対策は「高級になればなるほど深くなるバルコニーのひさし」により対策しているのが実情です。
↑
これじゃ景観も何もね、、
高層階を選んだが「主な景観はカーテンだ」とかになっちゃいますよ。
(角部屋なら腰高窓の出窓なんかがあるからアレですが)
■話は景観に戻ります、
前段説明がちょっとヒントになっているのですが、『掃出し窓』が生きるのはバルコニーレスでシームレスに庭やテラスが見える事が前提です。
ですからマンション高層階でも『ルーフバルコニーがあればアリな設計』です。
(その点でもバルコニー内側のコンクリートしか見えないのに『掃出し窓』って元々無理あるんですが、、。仮にやるとするなら秀和シリーズのような鉄柵式のバルコニーとして方位を北東に向ければ高度恐怖症の人にはNGですが景観重視の『掃出し窓』にもなる。)
そこで、『ルーフバルコニーの特徴』に話を進めてみましょう。
好きな人は好きなんですが、案外分譲マンションで『ルーフのある部屋』購入した方などからは「失敗した」なんて意見を聞く事もあります。
ルーフバルコニーは戸建の庭同様に「掃除含めて自分で管理しないといけない」からです。
(特にマンションの場合排水管詰まらせると大変なので落ち葉が入るようなルーフだと頻繁に掃除が必要になる。)
『ルーフバルコニーの選択』する場合には「専用庭があると嬉しい」タイプの方にお勧めとなるんですよね。
マンション特有のホテルライクな『充実した管理』をそこに期待するのであれば、管理された共有部分のグリーンをメンテナンスフリーで眺める方が快適ですから、
それでも「何かと人を惹きつけるルーフバルコニーの魅力とは何か?」。
ズバリ高層階景観と『1階効果』の両方を兼ね備えているからです。
ルーフバルコニーであればバルコニー内側のコンクリートを眺めるだけの掃出し窓って皮肉は発生しませんし、何と言っても床と平行に水平認知が伸びるため、あたかも床が屋外まで広々伸びているような感覚になります。
生垣や塀にかこまれた戸建の庭側を参考に考えてみましょうか。
伝統的な日本建築であれば縁側や居室を囲むような廊下と室内側障子により、ぶ厚いカーテンを前提としていない設計になります?
「さっと障子を開ければいつでも外の景観が見られる設計」
(重い遮光カーテンでは興醒めです、)
さしずめ西洋建築の王様がホテル建築であれば、日本建築の王様は老舗旅館と言ってもいいかもしれないです。
実はマンションで『ルーフバルコニーのある部屋』も必ずしも南向きでは無い方がいいのです。
某マンションはそれがわかっているのか、最初からルーフバルコニーのある部屋を北向きに設計してたりします。
注)北向きっても対抗面は南ですから窓の外が開けていれば北向きでも日照ありますし(だって前が開けている=右は東で左は西なんですよ?空間が大きく広がっていればじゃんじゃん日照あります。)
北向きNGの風評は「あまりにも強引に南向き建築優先」のため北向きの部屋の前がすぐとなりのビルだったなど方位以外の環境が劣悪な場合が少なく無いためで、必ずしも方位が原因ではありません。
ですから『ルーフバルコニー』のように予め方位関係無く日照が期待できる構造だと、薄手のカーテンだけでも十分な北向きの方が居室も快適で高級感も高かったりします。
■更に追加で誤解要因
北向きなので寒いって風評もありますね。
これも方位を原因とされても困る話なのです。
北向きで寒かったら(熱伝導性能的に)南向きは夏過剰に暑いことになります。
それって断熱性能がもともと悪いって事ですから。
日本は梅雨があるため非木造は事実上外断熱工法を導入できないため、断熱材無しなんですが(期待できるのは躯体外壁のコンクリートの厚み)、室内の温度変化で重要なポイントってどこですか?
「窓ですよね」(対策グッズも昨今多数です)
ここで繋がるんですよ、
意味不明に高層階なのに『掃出し窓』にしちゃう設計の話。
只ですら断熱工法取れないのに、、
などなど日本の建築は、特に分譲などの販売を心配するあまり「あらぬ方向」行っちゃっている部分も多く、
つられて賃貸住宅探しの希望条件にステレオタイプな南向き希望とか付けちゃうのもリスクあるんですよ。
(それがマストであれば業者は南以外の部屋の資料捨てることになりますから。)
注)中段説明にあるように、
木造建築であればまた状況違ってくるので(南向き正解が多くなる)、全てのケースに適合するものではありませんが、特にマンション希望の方は注意した方が賢明です。
なかなか無いんですよね、
高層階で腰高窓、窓の外はフラワーボックスで(若干の断熱効果も期待できる)、椅子を窓ギリギリに配置して景観も快適に楽しめる部屋。
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『部屋から見える景観』あれこれ
2012年11月08日
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単に…
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(新築or築浅)
場所(人気の地域)
面積(広くなる)
だけで◯◯さんが仰る様な重厚な造りのマンションはありません!北海道の人はそこまで拘りませんので…」
見てくれは重厚(ドムスとペアシティの亜流みたいな低層)なれど造りは軽薄な所謂“見かけ倒し”なマンションが多々ありました
低層
デザイナーズ
タワーマンション
(高級と謳っている大通公園沿いの物件含め)
etc…
粗製濫造物件のオンパレードでした!
北海道はもっと戸建賃貸にシフトするべきに思いますよ(笑
土地広いんだから(というかその方が底地価格安定する筈←戸建ということでそれに見合った価値を保持しつつ)。
確かに札幌以外では無理ある郊外の分譲戸建てになりますが、札幌圏内でもテラスハウス規模の低層メインにいって欲しいと思います。
底地評価との関係で非木造で高いレベルの建築には構造的な無理があるんですよね。
(なので道庁などの公共建築だけは異例に立派のような形になるのが所謂地方の風景の筈で)