何度かこの件は説明してきているんですが、改めて書いておこうと思ったところです。
郊外物件と違って都心部の賃貸物件は「大家さんも副業」的な資産管理上の不動産投資で分譲マンションを購入し募集される賃貸物件が少なくありません。
所謂『分譲キラー』と呼ばれる高級賃貸も実態は分譲が区分所有か一棟売りかの差で(中堅『分譲キラー』は数年後一棟売りでオーナー法人が変わっている事も時々あります)、これは何かと申しますと「賃料設定」が周辺相場の状況というより『利回り計算』で設定される事が多い事を意味します。
「それで周辺相場おり安いとかならバカみたいじゃないか」なんておっしゃる方いらっしゃるかもですが、話はそうそう単純なものでは無いのです。
実際不動産相場というものは存在しますが、賃貸物件は各室内容があまりにも違いますから「棟内各室の市場評価」は簡単ですが、隣のマンションの○号室とうちのマンションが同じ?というようにDATAベース上坪単価の評価でそのまま貸せるとかある筈も無く(笑
話をわかりやすくするために、地方や郊外でありがちな賃料設定の進み方を話しておきましょうか。
都心と違い地方や郊外の場合「昔からの所有している土地を(相続税対策などで)開発して賃貸に」などの事例が多くなります、ですから家主さんは「区分所有で販売したらこの部屋幾らぐらい」もわかりませんし、そもそも土地を売却した場合の価格もわかりません。
ですから建築時にザックリこの辺で1DKのアパートっておいくらぐらいかしらで考えますよね。
そして昔からのベテラン大家さんなら専属専任で管理やコンサルを任せる管理会社との関係もしっかりしているところかと思いますが、地方や郊外の方がその管理会社も「老舗としてその信用も地域で有名」という会社なかなかありません(開発で街に賃貸住宅が増えたのが最近なんですから)、
結論駅前不動産屋さんなどを回ったり(或いは不動産会社が大家さんに営業回りして)「おいくらぐらいかしら」となります。
不動産管理会社は管理物件が多いほど経営は堅実になりますから是非新しいお部屋を任せてもらいたいと考え「ウチは来店のお客さんも多いので○万円で出せますよ」的な営業トークも出るんですよ、それは。
(都心の信用厚い老舗とかであればしっかり評価して「このグレードだと○万円でしょう」と掛け値なしに説明あると思いますが、地方ほど小規模不動産会社間の競争もあって「裏付けとぼしいいい話」みたいな側面も増えがちだと。)
結論「大家さん願望込みの賃料設定が多くなりがち」なんです。
これに比べて都心部の大家さんの場合母数となる物件の性質上「およそ分譲マンション賃貸を手掛けていない人は少ないだろう」と考えられる環境にありますから→「不動産投資的に考え賃料=投資利回り」で考える傾向が出やすい。
(投資向け中古マンションの広告図面には必ず「利回り○%」というコピーありますから。)
「高利回り=ハイ(空室)リスク」となるので、安定収益を重視するなら「いい線の利回り(賃料)はどのぐらいか」への意識付けは強くなります。
というか投資会社に勧められてそのまま賃貸の運用も任せるタイプの家主さんも少なくないでしょう。
投資会社は営業時の安定収益を考えリスクの高い利回り設定にしませんから「安定収益(審査は厳しく・賃料は低額な設定)運用を提案します」、或いは借主代理的にサブリース(賃料保障)ともなれば空室率上昇は管理会社の死活問題になりますから(数か月空室なんてことになれば地獄です)、この場合も「安定収益(サブリース系の場合だと”甘い審査で低額賃料設定”が多くなる側面もある)」で計算します。
この辺の物件が多く市場参入することになりますから、同様タイプの空室率に影響及び市場原理で「都心ほど賃料設定が安くなる」傾向があるんです。
(郊外地方でも分譲賃貸の多いエリアは同様傾向が出やすいと言える)
つまり都心部の大家さんは何気に(癖というか)「売買価格と賃料は連動する思考」の方が多いってことです。
▲そして、売買の現場には強烈な格安物件の代表があります。
(これが賃料相場からも離れる格安物件)
『旧法借地権』と『公道接道無し再建築不可』この二者です、
銀行の担保価値が著しく低いため(土地利用における自由度が低いため)、仮に売買になっても買う側が銀行から(資産評価的に)ローン審査通らないという事を意味しており(ぶっちゃけキャッシュでしか買えない)、大家さん的にも「著しく資産価値の低い部屋」と認識されますし、10年20年ぐらい目安で「いつかは定期借家契約賃貸(賃料7掛けぐらいになる)に切り替えないとだな」と認識される物件。
実際に『定期借家』の物件も含まれてきますが、それ以外も『定期借家』予備群となるので「賃料設定7掛けとは言わないまでも安くなる」と”想定される”んです。
■この部屋がダントツで安いワケです。
更に日本特有かと思いますが「築浅信仰の勘違い」により『古築分譲マンション』は実際の価値以下で取引されることが多いため、前者ほどじゃありませんがこちらも(売買価格と賃料は比例関係にあるため)郊外に比べるとかなり割安感大きいものになります。
(※区画整理も進んでいたり新興開発地域の郊外や地方では『旧法借地権』の土地や『再建築不可』の不動産は元々少ない。更に言えば相続税対策で土地評価の難しい農地からの転用物件も多いので、転用後建築したアパートを仮に売却した場合の市場価値がはっきりわからない場合も多い。)
(※2:開発の歴史の古い都心部ほど『古築の中古マンション』は多く、開発の歴史の浅い郊外では分譲マンションそのものも少ないし、古築中古マンションの母数は更に少ない。)
■つまり都心部特有のダントツで安い部屋は『木造戸建てか小規模木造AP』を代表格に、マンションマストな人の場合にはそのまんま(建替え論議などが盛んになっている)『定期借家契約のマンション』や『商工地域の鉄骨造マンション(商店街建築の大半がこれ)』にその可能性があります。
所謂ステレオタイプなRCマンションにはその可能性は少なくなりますが、前述の『古築分譲マンション賃貸』に割安感はある事になりますから、
都心部の場合「築浅信仰とRCオートロックマンションのフラグ」さえマストにしなければ相対的に郊外に比べて割安な候補が出てきます。
勿論設備の更新が遅れていれば「安いなりに」となってしまいますから、リフォーム状況を内見で確認する事にもなるんですが、この点でも総じて古築物件ほど「リノベーション規模のフルリフォーム」が施行される率が高くなるので、中途半端な築浅より内装レベルが高い部屋とか珍しい話ではありません。(長期の安定運用益で十分初期投資が回収されている部屋も少なく無い)
(注:郊外でも街道筋など歴史ある近郊都市であれば「都心部特有の安い部屋」が同じ条件で発生します。)
<番外編>的に話を郊外における賃貸で補足すると
■郊外で安いのは昔ながらの古築木造APや古築『中古戸建』であるとか、更に駅からも郊外となる『建売分譲戸建て』であって、「そこそこ標準的なRCマンションの賃料は都心部とそれほど差が無い」のはある意味常識。
グレード的な評価を加えて考えれば郊外の「そこそこ標準的なRCマンションの賃料」はCP比で見ればかなり高いと言い切っても間違いでは無いでしょう。
(郊外のマンション建築の場合、底地の担保評価が安い上に家主さんの資産状況も相まって「建築時の資金調達における金利も高い」と想定するのが自然なので都心部のマンションより建築コストが総じて高くなるという見方もできます。)
実数で言うと、
たとえば東急圏内でも必ずしも相場の高い印象では無い街の分譲キラー系は20平米ちょいのB・T別タイプで余裕で9万以上10万近くに達してますが、高輪台あたりのヴィンテージ20平米ちょい3点ユニットの方が安い(8万ちょい)という状況にあります。
同タイプの分譲キラーを飯田橋あたりで探すと(も少し広くて)10万前後となる。←ぶっちゃけほとんど差が無い。
注:「もっと大きな視野」で見た場合。元々不動産投資の世界では「底地の安い地方都市のマンションアパート=地価の資産価値がハイリスク」→家賃の想定利回りは10%前後が目標など(都内であれば7%で上等5%で堅いとか安定利回りとされ)、借りる側から見た場合地方のがCP比的に割高になるのは常識です。この傾向は都内でもスケールダウンしつつですが「都心と郊外の関係の中で」成立します。
■郊外のRC賃貸マンションを探す場合には「○○ニュータウン」的に昭和高度経済成長時などに政策的にベッドタウン開発が行われた特定都市を狙うと都心と同様な割安物件を見つける事ができる事になります(この場合2DKタイプが標準になりますが)。
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時々都心や都心近郊で相場を離れるような賃貸物件がある理由
2013年07月13日
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