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マンション「日本特有に中流論」

2013年11月21日

私は欧米の建築にそれほど詳しい訳では無いのでその点は一部アレですが、ご存じのとおり本来「マンション」の単語は高級建築のみを指すもので、日本で所謂ひとつの「マンション」として流通している言語の住宅は欧米的にはアパートメントであり木造も非木造も区別ありません。
(日本でも過去『団地』と呼ばれたものも現在の分類では「マンション」です。)
日本が上記表示となっているのは公取の表示上ガイドラインから来ているもので、「非木造のもの(軽量鉄骨を除く)がマンション」「木造のもの(軽量鉄骨を含む)がアパート」というカテゴリであるところに由来してます。
詳しく付け加えておくと、上記の非木造というのは「ビルや棟として」を占めているので内部造作壁的に分割されて別号室化していても(正確には一部木造みたいな)「表示上はマンションみたいな」グレーな分類になります。
(表示上はマンションでRC造とまで謳っていても木造アパートより遮音性が低いという某なんとか大手の某マンションシリーズみたいな、、話も出ちゃうのです。)

また細かい事言えば、棟がRC造でも壁などの造作がGL工法なんかですと(接着剤でコンパネ張りする工法)、壁が太鼓鳴りするですとか、床もデッキフロア造作の場合特にマンションは通気性が無いので劣化しやすく床が鳴く部屋も時折見かけます。
新築や築浅マンションに時折見かけるALC(発砲コンクリート)に遮音性能ある的話を聞いた事ありませんし(これは建材の問題なのか施工の問題なのか私にはわかりません)、
『マンション設計のキモは配管最短距離の水回り』という原則から「随分自由な配管ですね」な設計の中には「床下デッキフロア工法の代りに下階の天井裏に下水配管している」ものまでありまして。【物件概要】から推し量れる遮音性能は限界があるのは”事実”です。
■以前retour&Retourブログで紹介した「ナチュボーンの音楽マンション」という「やたらと遮音性に強い部屋」も構造的には鉄骨造ワンフロア占有型の小規模事業系ビル建築で、RC造ではありません。
(管理会社担当者も「何故こんなに遮音性強いのか不明」というツワモノでした。)

昔々木造アパートが主力時代に学生アパートなどに見られた「建築キット工法的な軽量鉄骨(プレハブ建築)アパート」が遮音性に弱い事が広く知られていますが、昨今は軽量鉄骨でも高級注文住宅のような種類もありここも一概に類型化はできません。
最近そういう物件表示ほとんどありませんが「重量鉄骨木造アパート」なんてのも昔ありました(木造でもいかにも強そうですよね)。

RC建築の中でも遮音性が相当強いと知られている(管理会社曰くかなりの音量で音楽問題無しとの弁)某マンションでも床仕上げは通常15oのコンパネで、管理元社長さんにその棟の中でも更に遮音に強い部屋を紹介してもらった時も「この部屋は床24oだから特に強い」という話を聞いた事あるんですが、昔オーディオファンの人間から言わせてもらいますとスピーカー工作で15o合板(コンパネ)といえば強度的に最低限でありまして(補強桟付けるのがマスト)、「24o〜かなり立派な水準、できればバッフルだけでも15o二枚重ね30oで」という感覚でしたから床が鳴る・鳴く・ダンピング不足など起こって当然なんです。
(ペット専用防音建材シートも相当厚みのある部材ですが勿論通常の建築には使用されません)
『遮音』に絞って話を勧めますと、密閉性や強度も確かに重要ではあるんですけどある程度の低周波以下になると強度云々だけで無くガッチリ質量がある部材じゃないと遮音は不可能です。
オーディオの世界ではダンピングに金属砂などを利用するレベル(音楽スタジオなどの扉は重量級の防火扉みたいな仕様ですよね)。
欧米の建築の実際の遮音性能は詳しく知りませんが、欧米は梅雨が無いため外断熱候補が可能で外壁もリアルに煉瓦や分厚いタイルですとか(これがまた地震も少ない上に築100年とかも普通なんで)、本当に古いものなら組積式石造り的なものまであるでしょう。現代的な効率的軽量建築との違いもおおよそ想像つきます。
(耐震性は日本の非木造が何倍も強いと思いますけど。)

GL工法や最近作の建築の施工上の問題として問題になっているのがPSや配線用の空洞など「なんやかんやと施工上の壁厚と関係無い部分からの音漏れ」です(そこだけ電気コンセントのプレート一枚みたいな)。音と言うのは高周波になるほど方向性があるので筒抜けでも経路が迂回していれば減衰しますが低音域は(背面バスレフなどでご存じのとおり)経路が何回折り返しなっていても減衰しませんし、映画の重低音ともなれば(車のエキゾースト配管でガラスがビりつくとか家鳴り騒動起きるみたいに)そのエネルギーは半端なくてですねコンクリ10cm厚ぐらい余裕で貫通するパワーあったりします。

(ちなみにRCのかぶり厚(鉄筋までのコンクリの厚さ)は外壁で4cm〜5cm表裏で×2ってところで、屋内造作的な間仕切り壁で一般に2cm〜3cmで×2とされてますから工法上別室○号室との壁がこの3cm×2なのか外壁並に5cm×2級なのか大きく違います。←奢った物量投入建築であればかぶり厚が厚くなるワケでして、この辺は築30年選手みたいなRC造のが期待できたりします。)

■と、ここまで聞くと「なんと嘆かわしい」感じしちゃうのかもなんですけど、
前述の低音域の話じゃありませんが、物には限界ってあります。ですから建築時にどこいら辺まで狙うかって事ですよね。
(ちなみに分譲マンション広告でよく見かける遮音性能で「LL40」だとかの数字見かける方いらっしゃるかもですが、あれはほとんど何の参考にもなりませんから(笑、使用部材の反発時のダンピング係数程度の参考指標です。)
一般的に勘違いしやすいのが、前述の「密閉性にスキマがあればアウツ」という事をご存じ無くてですね「ウルサイ壁側に遮音壁でも立てれば幾分でも違うのではないか」という考えです。←完全に天井から床まで密閉可能な工作しつつダンピングして鳴きの無い造作じゃない限りこれ全く効果ありません。更に板の鳴き止め補強桟だとか24o二枚重ねなんて話に及べば「ピアノ設置可の耐荷重性能の床」じゃないと強度的な問題にもなり兼ねません。
(ちなみに集合住宅建築の頂点とも言えばホテルで勿論その建築仕様は別物です。)

■かと言ってRC造マンションのガチ強度のあるコンクリート壁そのままの部屋って「物凄く音が響くんです」(少しの音漏れでも部屋の反響特性で倍加する部分もある)。
内見案内の時も木造建築からRC造マンションなどへ移動しますと「同じ会話音量でも音が倍増したか」ってぐらいに室内の壁で音が反響します。
(木造建築が主力の米国は主に高能率大型バスレフ型フロアスピーカーであるのに対して、居室広さも関係してますが欧州のスピーカーが押しなべて低能率小型密閉型なのは室内反響に応じたものです。)反響は家財やカーテンが入る事で徐々にデッドニングされるので実生活では内見時ほどではありませんが「家財が少ない人ほど室内反響が大きい」事になります。=1Rなどは一般生活においても音が響きやすい部分ありますね。
昔オーディオファン的な見解からしますと「部屋のコーナーなどに反響止めのキルティングの巻物」など設置するとよいとされてますから、壁に厚手のタペストリーを下げるとかってのもデザインだけの話ではなかったりするんです。

■などなど建築ってものは(日本が梅雨があるため外断熱工法が無理であるとか)、建築コストだけでなく、各国の地理や歴史的経緯と密接に関わるもので、梅雨のある日本の建築は本来基本木造がベストですが、日本に非木造が普及した背景には経済性だけで無く「災害やWWUの空襲による火災への教訓など災害への耐性」という部分大きいですから、今後の建築が非木造主力となる点は避けようもありません。
しかしそもそも論として同じ木造でも遮音性に強いのは2×4工法ですが、これは米国式建築です。
日本の伝統的木造建築と言えば「縁側に雪見障子に紙の襖」ですから元来遮音性重視では無いのです。ものは考え方で、日本の非木造の微妙な遮音性も「現状の非木造建築への誤解」から始まっている部分も多いのじゃないかと。(住む人と作る人の遮音性認識や期待値にギャップがある)

よーく考えてみれば、
日本のマンションにおける代表的建築部材と言えば「3点ユニットバス」ですが(東京オリンピックのホテル建築ラッシュ時に発明されたとされている)、この3点ユニットの微妙な『中流性』って日本らしささのまんまじゃないかと思うんです。
実のところ非木造における水回り配管最短距離設計の原則に大変貢献度の高い建築部材でもあり限られた平米数の中で居室の広さを最大化させてくれるアイテムです。所謂投資向け分譲1Rの冷蔵庫付きミニユニットキッチンはその後の展開を見れば失敗作だったと思いますが、3点ユニットは大発明でしょう。
■「マンションライフのベテランは3点ユニット使いである」
と私は考えておりまして(ちなみに「B・T別生活のベテランはバラ釜使いである」)、
この時部屋のCP比が最大化するのは間違いありません。
それぐらい建材として3点ユニット実装の部屋は効率性が高いって事です。
(B・T別のニーズが間違っているという意味では無く「それはダイレクトにコストに反映しちゃいますよ」という趣旨。)

ですから『日本的中流マンション』において殊更高級感的な演出や広告はあまり真に受けない方が賢明であると思います。
躯体の強度を優先するのであればビンテージで無くとも昭和の往年作のが優秀ですし、
オートロック云々の築浅マンションも最近作の2×4木造アパートに実質で軽く負ける場合も少なくありません、少なくともB・T別を優先するなら木造アパートの選択肢を残すことが吉です。
事、遮音性に限って言えば事実上「ナチュボーンな性能に依存する」と言えますからくじ引き的確率になっちゃう側面もあり(retourが分譲のモデルルーム的購入に懐疑的な理由でもあります)、先日retourブログのコメント欄にも書きましたが遮音問題も賃貸住宅に限って言えば管理会社や審査内容・家主との媒介契約内容(取引態様)の方が重要では無いかと思います。

表現としてちょっと違うかも知れませんが、
日本は昭和においてBMWを学んでブルーバードのSSSとなるとこが”日本的”でもあったのありまして(ポルシェに対抗して初代GTRとか)、そこが”らしさ”でもあります。←日本にはアウトバーンも無いんですからね。
(日本の非木造建築建築黎明期において「それは公団住宅建設の文化住宅であり、その後の団地であり」)
「3点ユニットこそが日本のマンション建築を象徴している」(マンションと言えば3点ユニットと思えみたいな)ぐらいのが認識として誤解少ないと思います。戦後日本の歩んだ文化として評価すべきでしょう。

勿論予算に余裕があって鉄板の『分譲キラー』を狙えるのであればそれに越したことはありませんけどね(笑


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posted by kagewari/iwahara at 18:49 | Comment(0) | TrackBack(0) | 部屋探しの心理学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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