一番簡単な結論から説明しましょう。
書類の重要度から言えば
『東京都賃貸紛争防止条例』>『重要事項説明書』>『契約書』
このような順番になります。
つまり、東京の場合契約書条文はほとんど意味が無いに等しい状況にありまして(仮に署名捺印していても上部概念の『東京都賃貸紛争防止条例』と矛盾する内容は無効)、事実上東京都における賃貸契約は法的に内容が定まっており、極論(契約時正規業者の媒介であれば)確認する必要すらないぐらいカチっとしてます。
極論現在の東京の賃貸契約における契約書で重要な部分は「署名捺印欄だけである」といったところです(大手管理会社の契約書はその条文も保険などの約款のような記載にまとめられているケースもあります)。
であれば何の心配も無い、悪質業者のような業態は存在すらできないのでは?と思う方もいらっしゃるかもですが、前述記載のとおり「契約時正規業者の媒介であれば」の条件があるように何から何まで保護されるものではありません。
「封建的保護主義と自己責任自由主義」にあるように、そこは「自ら当事者として法的部分の知識などを理解し自己管理できること」が求められているのであり(何かあった時に契約の当事者として「それは違法ですよ」と言える知識が当事者責任として発生する)、実際公正な契約では『東京都賃貸紛争防止条例』の説明も『重要事項』同様に宅建免許提示の上、基本的に面談により説明とその(理解の)確認が義務つけられます。
法的に言えば、説明を受けている以上その内容を理解するのは契約者としての責任となります。
なんだか難しい話に聞こえますが、ぶっちゃけ「借主の権利などをしっかり理解しておきましょう」って話です。
■『東京都賃貸紛争防止条例』は通称「東京ルール」と呼ばれる条例で、
内容は「契約期間中の修繕や解約時の原状回復取り決め」といったものです。
それほど面倒な項目は無く
・需要事項設備と記載されたものは破損時貸主が修繕する(なので『重要事項』が書類として重要)
・消耗品は借主が日常交換
・室内の損耗に関して借主の故意過失ではなく日常生活の経年変化は原状回復の必要が無い
(例外事項は「過度な喫煙の汚れ」)
・解約時原状回復となる損耗があった場合、その修繕費用が暴利にあたるものであってはならない。
(修繕箇所の原状回復費用の請求は可能だがその損耗箇所を原因に室内全部の造作の現状回復の請求を行ってはならない)
・特約事項として貸主は指定の業者によるクリーニング費用請求が”可能”である
さっくり言えば上記のようなもので、
細かい部分の解説をつけますと、
グレーゾーンの「過度な喫煙って何か」と言われれば昨今の業界合意は「担当者がこの汚れは喫煙によるものですね」と一発でわかるような水準の汚れは借主責任ぐらいに考えておけばいいと思います。
(勿論「喫煙だ」「そうではない」の紛争を避けるため「禁煙」を条件に貸している大家さんもいます。しかし昨今の雰囲気ですと「喫煙者の分が悪い」感ありますね。)
こう書きますと「喫煙者にとっては大変だ」と思われるかもですが、決してそんなことはありません。残念な事に「東京ルール」にその条文は無いのですけれど、基本原則として「室内の造作は経年変化で劣化します」←ここは「東京ルール」にも記載あるとおりです。
その自然損耗の目安として業界は「室内造作の減価償却課税期間(限定的固定資産税のようなもの)」を根拠にしてます。概ね室内造作は10年で全損耗と考えられているので、契約期間6年以上であれば仮に壁紙原状回復全部張替えでも「実費全額の請求」とはならないという事です(だったら請求学は何割と決まっているものではありませんから「相談可能」と理解しておくのがいい線だと思います)。
ここも補足として「東京ルール」における「暴利にあたる項目」の解釈が相談の根拠となります。
賃貸契約の当事者はこの辺の知識が契約の当事者責任として必要であり(契約の内容を理解するのは自己責任ですから)その原則となる根拠を「東京ルール」が提示しているという事ですね。
個別の注意事項としては
何も『東京都賃貸紛争防止条例』は一方的に借主を保護しようというものでもありません。
あくまでも中立的に過去判例などから法的根拠を明示するものです。
ですから、その施行以来借主にとって不利になった部分もあります。
代表的なところから記載しますと、
・慣習的に以前は「木質部分へのネジ・クギ使用はパテ埋め可能な範囲はOK」でしたが、現在は木質非木質に関わらず「目立たない範囲の画鋲のみ」それを超えるものは故意過失の汚損破損となった
・フローリングの傷なども経年変化扱いされるケースもあったのですが、東京ルール施行以来「明確に確認できる汚損破損」となったので以前より原状回復請求されることが多くなった
(※現在傷などで最も原状回復が請求されやすい床仕上げはフローリングです)
・喫煙による汚れも原状回復請求されやすくなりました
注:特約事項として可となった「ルームクリーニング代の請求」は過大な原状回復を請求してはならない原則との交換条件のようなもので(汚損破損が経年変化だけならクリーニングで済む部分もある筈だなど)、ここは借主貸主どちらが有利というものではありません。
上記の内容もしっかり覚えておきたいところです。
補足としては、昔の「ペット可」は借主にもペットに理解ある物件に限られていたので(勿論現在より大幅に数も少なかったです)、貸主の好意で少々の傷も請求されないケースもありましたけれど、故意過失の汚損破損基準の明快化により(法律遵守の管理責任上としても)傷は請求されるのがデフォルトになった側面もあるかと思います。
その反面ペット可の母数は大きく増えています。
(※ペット可住居の増加により、通販グッズなどでも昨今様々な家財の傷防止部材も出ておりますのでペット飼われる方は「ペット飼いのスキル」として関連情報を調べるのが自己責任となっているかと思います。勿論ペットのストレスを考えれば造作の減価償却が進む長期入居を想定するのがペットのためにも好ましいですから、ケースバイケースで考えたいものです。)
加えてペット関連で言えば「ほとんどのペット可物件でデフォルトの条件となる「敷金1ヶ月増額・償却1ヶ月」この償却は原状回復請求額と無関係に償却されるもの」となりますから誤解の無いように。
(匂いが消えないなど、原状回復請求の想定外の対処などに備えるための保険的費用負担の意味合いになります。)
■参考資料として東京都の関連ページを紹介しておきます
以下URLとなります
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/juutaku_seisaku/tintai/310-0-jyuutaku.htm
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東京一人暮らしビギナー向けレポート『東京都賃貸紛争防止条例』
2015年02月06日
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