予算の関係で大幅に調達を減らされ虎の子の10機しかない陸自のAH-64Dアパッチ・ロングボウ(Apache Longbow 攻撃ヘリ)が先日洪水被害の救助にあたっていて驚きました。
2chのみなさんの解析によると、パイロットは空挺バッジ・救助で降下した陸曹はレンジャーバッジだったそうで、ほとんど特殊部隊じゃないですか(笑
「殺した数より救った数の方が多い」世界で唯一の軍事組織である自衛隊らしい話だったかなと思います(この辺は市ヶ谷か官邸からのプッシュもあったのではなかろうかと)。
心理学ブログの方に時折書いてきたことですが、みなさんあまりご存知無いかもですが、軍隊って組織は兵員単体において滅多に人を殺しません。てか心理的に殺せないのです(統計的に面と向かった状況では引き金がひけない兵士が多数存在することが明らかになっている)。歴史的にもww1前後からの大量破壊兵器の登場により(ピカソのゲルニカにあるとおり)随分殺伐としたものになっていますが、日本の戦国時代においても「信長だけが異例(本当の殺戮戦をやる)」だったと知られているように通常は安全保障的なプレゼンスによる”見合い”の後戦う事無く政治的決着に至るパターンが大半です(秀吉系というか)。
ソ連の崩壊というのがある意味本当の「ww2・ベトナム以降の世界における戦争の結果」だったのであり(戦火を交えず勝敗が決定)、本当に撃ち合いになる状況は軍にとっても「最悪のケース」となります。先の中国の軍事パレードも冷戦的に言えば「戦争行為そのもの」であり、本来軍部は本当に戦火を交える事を意図しません(実際には仕様できない兵器である核兵器がその象徴でしょう→MAD:Mutual Assured Destruction:相互確証破壊)。
ここは大火事を望む消防士がいないのと同じです。中国の場合は別の意味で大変危険なんですが、。
(中国が天安門事件を普通に認められるようになるまで、私は北京政府の権力基盤と統治能力をまったく信用できません。)
主に米国が指摘する「正規軍によらない局地紛争」は軍人にとって非常に大きな意味があり、「やおら殺し合いが始まっている状況」を指すので(しかも戦争の法律であるジュネーブ協定他国際法も守らず平気で無差別な民間人攻撃も行う)、下手な大国同士本気の軍事的緊張(本質的な意味の戦争)より性質が悪いとすら言えます。
(警察で言えば大規模な治安出動みたいな話は無いが、ヤクザ組織の無差別抗争の危険性が高まっているみたいな。)
先進国化して以来、米軍も前線に兵士を置いておける期間が激しく縮小しており(メンタルがもたない)、特殊部隊や民間軍事組織(警備会社を名乗る傭兵会社)の台頭は言葉にするとアレですが「メンタル的に人を殺せる部隊」が暗黙に想定されているようなもので(ウクライナに投入された義勇軍・民兵と言う名の元ロシア正規軍のみなさんもそちら系でしょう)、安保法案における自衛隊の後方支援の意味が時折「後方など無い」みたいな位置づけで批判される事もありますが(勿論戦術的にはそれで正しいのですが)、思うに軍部の判断としては「前線に送らない(兵員単位の殺生の場に出ない)」意味が大きいのでは無いかと思います(米軍の求めるとことも本音でそうなんだと思います)。
むしろこの点はPKOの警護任務の拡大の方が高いリスクとなるのですが、指揮官の知見が高ければ「弾幕を張って近づけない」的運用を重視するのでは無いかと思います。←この方が軍隊の本質としては正しいのです。
(ちなみに米軍においては、無人攻撃機の存在も兵士の生命やメンタルを意識した作戦になるのでしょうが、この作戦でも運用する兵士のPTSDが問題になっているとの話です。)
米国のプレゼンス低下により(恐らく現地法人も随分と低予算で済む余計な事をやらかしているようで)、困った事に中東を中心に世界情勢は不安定化しているだけでなく、「正規軍によらない局地紛争」は欧州にまで拡大しています。
いったい人間は何がしたいのかってぐらいの愚かな状況なんですが、
■「殺した数より救った数の方が多い」自衛隊には「現代社会における軍事組織の前衛的運用(殺生を避けつつプレゼンスを拡大する)」のような活路のようなものを生み出す可能性があるのじゃないかと思ったりします。
そもそも日本の自衛隊は武器兵器の体系からして防衛系(邀撃・迎撃)がメインです。
軍事組織の目標は紛争の鎮圧と平和維持であり、敵兵力の殲滅では無く武装解除ですから。
(たとえば警察組織もヤクザ組織の無差別抗争の鎮圧で「殲滅戦」みたいな事やらないワケで、武器を持った抗争の鎮圧と平和の維持を目的とする戦術は様々な可能性あるのではなかろうかと。)
こういった部分って、運用の方向に迷いも感じる米軍も求めているのじゃないでしょうか。
まもなく新安保法案は通過するのでしょう。
時にそれが問題とも指摘されますが、警察予備隊を母体とする自衛隊は武器の使用などに際し警察官と同様の法令下にあります。立て篭もり事件などで警察も最後の手段で射殺命令もありますが、最後まで犯人の身柄確保を重視します。言うならば自衛隊とは現在の自衛隊法だと警察のテロ特殊部隊のような存在になりますから(各国に存在する国境警備隊にも近いかも知れません)、むしろそこを本旨として市ヶ谷におきましては、洪水被害にアパッチが出動したような「弾力的で斬新な戦術的運用」を期待したいところです。
国会で論議となった「兵員の安全確保」、ここにも戦術的検討の余地って(それにあわせた武器体系含めて)様々の可能性があると思います(私は自衛隊が世界で最初に光学迷彩を投入しても驚きませんよ)。
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